韓国・Sungkyunkwan UniversityのDongwon Yoon氏らは、23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV23)と心血管系、神経系、免疫系の有害事象との関連を評価するため、PPSV23を接種した高齢者4,355例を対象にself-controlled risk interval(SCRI)法を用いたコホート研究を実施。その結果、PPSV23接種と重篤な全身性有害事象との関連は認められなかったと、JAMA Netw Open (2024; 7: e2352597)に報告した。

心不全脳卒中、ベル麻痺、ギラン・バレー、敗血症などを評価

 PPSV23は、30年以上にわたる臨床実績に基づき、一般的に安全であると考えられている。米国やオーストラリアでは、PPSV23接種後の予期せぬ重篤な全身性有害事象の報告はない。

 韓国では2013年から65歳以上の成人を対象に、PPSV23の全国予防接種を実施しており、PPSV23の安全性に対する国民の信頼を得ることが重要になっている。そこでYoon氏らは今回、高齢者における心血管、神経学的および免疫学的有害事象とPPSV23接種との関連を評価することを目的に、SCRI法を用いた研究を実施した。

 韓国予防接種登録情報システムと国民健康情報データベースから作成した大規模リンクドデータベースを用いて、65歳以上で2018年7月~21年6月にPPSV23接種歴があり、リスク期間(0日目を接種日と定義し、接種後1~28日目)およびコントロール期間(接種後57~112日目)中に心血管、神経学的、免疫学的イベントが発生した患者を対象とした。PPSV23接種によるリスクの過小評価を避けるため、リスク期間とコントロール期間の間に28日間のウォッシュアウト期間を設けた。2022年11月~23年4月のデータを解析した。

 除外基準は、PPSV23接種ガイドラインまたは高齢者の全国予防接種プログラム(NIP)基準に該当しない者(PPSV23を2回以上接種、65歳未満、肺炎球菌結合型ワクチン接種歴ありなど)、年齢や性の情報が欠落している者、事前に定義したリスク期間の開始日からコントロール期間の終了日までの間に死亡した者とした。

 主要評価項目は、リスク期間とコントロール期間中における心血管イベント(心筋梗塞、心房細動、心筋症、心不全、低血圧心筋炎または心膜炎脳卒中)、神経学的イベント(ベル麻痺とギラン・バレー症候群)、免疫学的イベント(敗血症、血小板減少症、アナフィラキシー)のうちいずれかの発生とした。条件付きポアソン回帰モデルを用いて発生率比(IRR)と95%CIを推定した。

 4,355例(平均年齢72.4±8.2歳、男性52.1%)を解析に組み入れた。

全対象疾患でリスクの上昇なし、心筋症リスクは低下

 解析の結果、心血管イベントについては、心筋梗塞(IRR 0.96、95%CI 0.81〜1.15)、心房細動(同0.85、0.69〜1.05)、心不全(同0.85、0.70〜1.04)、脳卒中(同0.92、0.84〜1.02)、低血圧(同1.02、0.73〜1.42)、心筋炎または心膜炎(同1.11、0.37〜3.32)にPPSV23接種との有意な関連は認められなかった。一方、心筋症リスクはリスク期間で有意に低かった(同0.49、0.27〜0.88)。

 神経学的イベントと免疫学的イベントについても同様で、ベル麻痺(IRR 0.95、95%CI 0.72〜1.26)、ギラン・バレー症候群(同0.27、0.06〜1.17)、敗血症(同0.99、0.74〜1.32)、血小板減少症(同1.18、0.60〜2.35)、アナフィラキシー(同0.30、0.04〜2.21)のいずれもPPSV23接種との有意な関連は認められなかった。

 さらに性、心血管イベント既往、免疫学的イベント既往別のサブグループ解析を行ったところ、いずれのサブグループにおいても、PPSV23接種と心血管イベント、神経学的イベント、免疫学的イベントとの間に有意な正の関連は認められなかった。

 以上を踏まえ、Yoon氏らは「PPSV23は心血管系、神経系、免疫系に関連する重篤な全身性有害事象のリスク上昇とは関連しないというこれまでの知見を裏付ける結果が得られた。今回の知見は、ワクチンに対する懸念の払拭と、高齢者へのワクチン接種の奨励に役立つ」と結論している。

(今手麻衣