心膜炎〔しんまくえん〕 家庭の医学

 心臓は心膜という膜に包まれており、この膜に炎症が起こったものが心膜炎です。ウイルス感染やなんらかの全身性の病気による炎症が、心膜にも起こって発症する場合があります。
 また、大きな急性心筋梗塞心筋炎などの炎症が、心膜にも波及して心膜炎となることもあります。

[症状][診断]
 発熱や胸の痛みなどですが、深呼吸など心臓の膜が引っ張られるような場合に痛みを強く感じることがあります。
 心電図にも変化を起こすため、しばしば急性心筋梗塞などとまちがわれることがありますが、専門医の診断を受ければ、鑑別は比較的容易です。心臓以外の病気が原因となって引き起こされている場合は、その疾患の診断をはっきりとつける必要があり、疾患によって治療法が異なるため注意が必要です。
 また、炎症が慢性的になると、心膜が厚くなったり心膜と心臓の間に心嚢(しんのう)液という水がたまったりして、心臓の動きを制限することがあります。重症になると、心臓が十分にひろがることができず、からだに必要な血液を送ることが困難になって、血圧が下がってショックといわれる重篤な状態になることもあります(心タンポナーデ)。

[経過]
 ウイルス性のものであれば、比較的経過は良好ですが、炎症が長びいたり、心嚢液がふえ続けたりする場合には、心嚢液を針で抜いて性状を調べる必要があることもあります。

(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団 附属 榊原記念病院 副院長/榊原記念クリニック 院長 井口 信雄
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