近年、日本では肥満人口の増加により脂肪性肝疾患に伴う肝硬変の急増が問題視されている。岐阜大学保健管理センターの三輪貴生氏らは、若年成人男性における代謝機能不全に関連した脂肪性肝疾患(MASLD)/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の実態および日本肥満学会が推奨する食行動問診票に基づく食行動との関連を検討した。その結果、MASLD/NAFLDの保有率は11%で、体質や体重に関する誤った認識がMASLD/NAFLDと関連することが示唆されたとSci Rep2024; 14: 2194)に報告した。

MASLD/NAFLDは食行動と強く関連

 調査対象は、2022年4月に新入生健康診断を受診した岐阜大学大学院生322人(年齢中央値22歳、全て男性)。通常の健診項目に加えて腹部超音波検査を行い、日本肥満学会が提唱する食行動問診票を用いて、MASLD/NAFLDの実態および食行動との関連を検討した。NAFLDはアルコール関連(アルコール摂取量30g/日超)やウイルス性、薬剤性の肝疾患がない脂肪性肝疾患を有する者、MASLDは過体重、耐糖能障害、高血圧、脂質異常症のうち少なくとも1つを満たす者とした。なお、食行動問診票(55問4段階評価)は「体質や体重に関する認識」「食動機」「代理摂食」「空腹・満腹感覚」「食べ方」「食事内容」「食生活の規則性」の7項目を評価するもの。

 検討の結果、MASLD/NAFLDの保有率はそれぞれ11%、16%で、両方を有する割合は11%だった。

 食行動問診票の合計点数は、MASLD/NAFLD保有者ではいずれも非保有者と比べ有意に高かった(MASLD:102 vs. 90、P=0.006、NAFLD:97 vs.90、P=0.007)。また、制限付き三次スプラインモデルにより、合計点数が高まるに従いMASLD/NAFLDのリスク上昇が示された。

「他人より太りやすい体質」との認識がMASLD/NAFLDに寄与

 食行動質問票の各項目について検討したところ、MASLD保有者では非保有者に比べ「体質や体重に関する認識」「食べ方」に関する点数が有意に高く、同様にNAFLD保有者は非保有者に比べ「体質や体重に関する認識」「食動機」「食べ方」に関する点数が有意に高かった。多変量解析の結果、「体質や体重に関する認識」と「食べ方」がMASLDに、「体質や体重に関する認識」がNAFLDに関与していることが示唆された。決定木解析では、「体質や体重に関する認識」が12点以上の者では16%がMASLDを有するのに対し、12点未満の者では2%にとどまっていた。

 また、ランダムフォレスト解析の結果、MASLD/NASLDに最も強く関連する項目は「体質や体重に関する認識」だった。「体質や体重に関する認識」の評価については「太るのは甘いものが好きだからだと思う」「食べてすぐ横になるのが太る原因だと思う」「かぜをひいてもよく食べる」「水を飲んでも太る方だ」「太るのは運動不足のせいだ」「他人よりも太りやすい体質だと思う」「それほど食べていないのに痩せない」などの質問が含まれており、これらの誤った「体質や体重に関する認識」が脂肪性肝疾患に強く関与する食行動であることが明らかになった。さらに、食行動問診票の全質問項目を用いて決定木解析およびランダムフォレスト解析を行ったところ、MASLD/NAFLDに最も寄与する質問は「他人よりも太りやすい体質だと思う」だった。

 以上から、三輪氏らは「大学院生を対象とした研究により、若年成人男性の1割以上がMASLD/NAFLDを有し、食行動と関連することが明らかになった。特に『体質や体重に関する認識』はMASLDと強く関連していたことから、誤った認識への介入の必要性が示唆された。食行動問診表を用いた食行動の把握は、回答の過程で改善点が自ずと明らかになる。食に対する認識の是正や行動変容につながることで、MASLD/NAFLDの改善および健康寿命の延長に寄与することが期待される」と述べている。

編集部