特発性間質性肺炎(IIPs)は、びまん性肺疾患のうち特発性肺線維症(IPF)をはじめとする原因不明の間質性肺炎の総称で、国の指定難病とされている。今年(2024年)4月に厚生労働省の診断基準および重症度分類基準が改訂され、外科的肺生検なしで診断が可能となることなどを日本呼吸器学会が公式サイトで発表した。
IPFに新たな治療薬登場
IIPsは、①IPF、②特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、③呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患(RB-ILD)、④剝離性間質性肺炎(DIP)、⑤特発性器質化肺炎(COP)、⑥急性間質性肺炎(AIP)、⑦特発性リンパ球性間質性肺炎(iLIP)、⑧特発性胸膜肺実質線維弾性症〔PPFE、別名:特発性上葉優位型肺線維症(iPPFE)〕、⑨分類不能の特発性間質性肺炎-の総称である。
これらのうち最も高頻度に見られるIPFは乾性咳嗽や労作時呼吸困難を主症状とし、肺がん、肺高血圧症、急性増悪、気腫性病変(気腫合併肺線維症)、真菌をはじめとする肺感染症などを合併することもある。IPF以外のIIPsの治療ではステロイドや免疫抑制薬が用いられるが、IPFには根治療法がない。近年新規治療薬が登場しており、特に抗線維化薬ピルフェニドン、ニンテダニブの有効性が示され、注目を浴びている(関連記事「特発性肺線維症ガイドラインを6年ぶり改訂」)
組織診断基準または臨床診断基準を満たせば診断可能
IIPsの診断および分類については、現在は高分解能CT(HRCT)で明らかな蜂巣肺が確認できるIPFのみが外科的肺生検なしに診断が可能だが、それ以外のIPFおよびIPF以外のIIPsは外科的肺生検に基づく病理組織学的診断が必要である。今年4月の改訂では、蜂巣肺のないIPFおよびIPF以外のIIPsについても、臨床診断基準を満たせば外科的肺生検なしでの診断が可能となる。またiPPFEがIIPsとして認定される(図)。
図.特発性間質性肺炎の診断フローチャート
重症度分類については、I度〔安静時動脈血酸素分圧(PaO2)80Torr以上〕またはⅡ度(同70Torr以上80Torr未満)であっても、運動時の低酸素血症〔6分間歩行試験で最低動脈血酸素飽和度(SpO2)が90%未満〕を認めた場合には、医療費助成の対象となる重症度Ⅲ度に認定される(表)。
表.重症度分類判定表
(図、表とも厚生労働省公式サイトより)
以上の改訂内容について、日本呼吸器学会は「より多くのIIPs患者が適切な医療費助成を受けられることを目的としたものだ」と説明している。
(服部美咲)