「紅麹(べにこうじ)」配合サプリメントの健康被害を小林製薬(大阪市)が公表してから22日で1カ月。これまでに関連が疑われる死者は5人、入院者数は延べ約240人に上る。一部の紅麹原料から毒性の強い「プベルル酸」など本来含まれていない複数の成分が検出されたが、混入の経緯は不明のままだ。国は実態解明を急ぐとともに、機能性表示食品制度の見直しに向けた議論に着手した。
 厚生労働省は3月29日、健康被害が報告された機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」からプベルル酸が検出されたと発表した。確認されたのは昨年4~10月に製造された紅麹原料からで、同9月の製造分に最も多く含まれていた。さらに国立医薬品食品衛生研究所(川崎市)の分析で、プベルル酸のほかに少なくとも二つの想定しない化合物が含まれていたことも判明し、特定を急いでいる。
 紅麹原料を製造していたのは昨年12月に閉鎖した同社の大阪工場(大阪市)。同工場では同4月、従業員が床にこぼれた材料の一部を使って食品向けの原料を製造し、取引先に納入するなどのトラブルも明らかになった。
 健康被害の公表の遅れも指摘されている。小林製薬が商品の自主回収を発表したのは被害の把握から約2カ月後。記者会見で小林章浩社長は「当初は紅麹が原因だと分からなかった」などと釈明に追われた。
 厚労省などは3月末、大阪市と和歌山県の関連工場を相次いで立ち入り検査し、今月6日には本社で聞き取り調査をした。同省幹部は「死者も出ており、緊急事態として対応している」と話す。
 一方、機能性表示食品に関する指針は、企業が被害情報を把握した際は速やかに行政に報告するよう求めているが、義務ではない。消費者庁による総点検では、健康被害情報が寄せられた22社全てが同庁への報告を不要と判断していた。
 同庁は19日、医師や薬剤師ら有識者による検討会の初会合を開き、機能性表示食品の在り方について議論を始めた。制度の見直しについて5月末までに意見をまとめる。 (C)時事通信社