生まれつき歯が少ない先天性無歯症の患者を治療する「歯生え薬」の開発に向けた臨床試験(治験)を北野病院(大阪市)と京都大付属病院(京都市)などの研究グループが9月から開始する。まず、奥歯を失った健康な成人男性に投与して安全性を確認。その後、子どもの無歯症患者を対象に治療効果を検証し、2030年ごろの実用化を目指す。
 先天性無歯症の患者は人口の約1%を占め、6本以上欠けている遺伝性の患者は1000人に1人いるとされる。根本的な治療法はなく、子どもの場合、成長に合わせて入れ歯を作り直し続ける必要があるという。
 研究グループは、歯が生えるのを抑制するたんぱく質「USAG―1」を発見。その機能を妨げる薬剤を開発して、先天性無歯症のマウスや犬に投与したところ、歯が生えることを確認している。
 治験は9月~来年8月、京大病院で30~64歳の健康な男性30人に薬剤を点滴で投与し、安全性や適切な投与量を調べる。その後、2~7歳で4本以上歯がない患者を対象にした試験を行う予定。
 将来的には、虫歯などで永久歯を失った人にも応用できる可能性があるという。
 北野病院歯科口腔(こうくう)外科の高橋克主任部長は「歯がないことで生活に支障が生じている患者の期待に応えたい」と話している。 (C)時事通信社