2025年度予算案で、社会保障関係費は38兆2778億円に上り、過去最高を更新した。25年には「団塊の世代」が全て75歳以上となり、医療・介護費の増加が続く一方、少子化も深刻化している。新たな国民負担を生じさせない形で子育て支援策を拡充するため、医薬品の公定価格「薬価」の引き下げといった歳出改革を進めた。
 政府は子育て支援策の拡充財源として、公的医療保険料に上乗せして徴収する支援金制度を創設し、26年度から段階的に実施する。28年度には支援金で1兆円を確保するが、「医療、介護などの歳出改革で同額分の保険料負担を軽減し、新たな負担増を『実質ゼロ』にする」(厚生労働省幹部)方針だ。
 25年度予算編成では、医薬品の市場実勢価格が薬価を一定程度下回っていたため、全品目の約半数での引き下げを決定。この結果、保険料負担は1200億円程度軽くなる。
 入院などで医療費が高くなった場合に患者負担を抑える「高額療養費制度」は、自己負担上限額を2025年8月から3段階で引き上げることを決めた。25年度の保険料軽減効果は600億円程度となる。
 こうした改革を実施することで、25年度は計1700億円程度の保険料負担が軽減される。23~25年度の累計では計4900億円程度に上り、子育て支援策に充てる目標額の半分程度で確保のめどが立ったことになる。今後は、75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担見直しなどを検討する。痛みを伴う改革には慎重な声も根強く、どこまで切り込めるか、石破政権の本気度が問われる。 (C)時事通信社