最も多いタイプの遺伝性難聴の原因遺伝子を最新のゲノム編集で修正し、機能を回復させる技術を開発したと、順天堂大の神谷和作准教授や宇梶太雄・非常勤助教らが10日発表した。今後、動物実験で実際に聴力が戻るか確認した後、患者への臨床応用を目指す。
神谷准教授は記者会見で「臨床応用する場合は、耳の穴から内視鏡を使い、内耳にゲノム編集用の遺伝子セットを注入することになる。5~6年後をめどに安全性を確認する治験を行いたい」と話した。論文は米医学誌JCIインサイトに掲載される。
内耳にはリンパ液で満たされた蝸牛(かぎゅう)管があり、有毛細胞が音の振動を電気信号に変換して神経に伝える。この変換にはカリウムイオンの流れが必要だが、「GJB2(コネキシン26)」遺伝子に変異があると、イオンが細胞間を流れなくなる。この遺伝子の変異は遺伝性難聴の約半分を占める。
神谷准教授らは修正用の遺伝子セットをウイルスで内耳に送り込む技術を開発し、東京大の濡木理教授らが開発した最新のゲノム編集技術と組み合わせた。その結果、ヒトの培養細胞や生きたマウスで、GJB2遺伝子の変異を効率良く修正。イオンが流れる構造を回復できた。 (C)時事通信社
遺伝性難聴のゲノム編集技術開発=最多タイプを修正、治験目指す―順天堂大

(2025/03/11 07:09)