がん研有明病院とGoogle AI を活用した乳がん検診の共同研究において、乳がん検診の精度と健診プロセスの効率の向上を確認
公益財団法人がん研究会
公益財団法人がん研究会有明病院(がん研有明病院)とGoogleは、日本における乳がんの早期診断と疾病管理の発展のために、AI を活用した乳がん検診の研究に向けて共同研究契約を2021 年の11 月に締結しました。 Googleは、米国と英国の専門家と共同で、検診用マンモグラフィから乳がんを特定するための機械学習モデルを開発し、2020 年に学術誌「Nature」に発表(英文)しており、がん研有明病院はGoogleと共同でこの機械学習モデルの有効性を日本人で検証してまいりました。 このたび、共同研究の結果から、乳がん検診の精度と検診プロセスの効率を向上させる結果が得られ、Radiology Advances 誌において発表されました。 発表ページ:https://academic.oup.com/radadv/article/1/2/umae011/7667296
乳がんは日本人女性で最も罹患数の多いがんで、毎年約9.7万人が診断されています。乳がん死亡数においては、他の先進国では1990年以降減少しているにもかかわらず、日本においては増加しています。マンモグラフィによる集団検診は、乳がんを根治治療が十分可能な早期の段階で発見できますが、残念ながら日本での乳がん検診受診率は約47%であり、欧米の75%以上と比較しても低いのが現状です。また、日本では検診マンモグラフィを異なる読影医により二重読影を行うことが推奨されており、今後検診数が増加すると読影医が十分対応できなくなる可能性があります。そこでAIを用いた乳がんスクリーニングシステムを用いることで、医療基盤拡大に貢献し、早期での乳がん診断に役立つことが期待されます。
今回の共同研究では、2007 年から2020 年の間にがん研有明病院乳腺センターおよび健診センターで撮影され、個人が特定されないよう適切な匿名化を施した女性のマンモグラフィ画像を使用し、AI モデルのパフォーマンス分析を行いました。
現在、日本におけるマンモグラフィのスクリーニングシステムで異なる読影医による二重読影が推奨されています。今回の研究では、この方法とAI モデルを「セカンドリーダー」として活用する方法を比較しました。AI モデルが医師とは別にマンモグラフィ画像を確認し、AI と最初の医師の見解が一致しない場合にのみ、2人目の医師による確認を採用しました。
この結果、AI モデルを用いたスクリーニングシステムは、乳がん検出の精度を7.6 % 向上させることがわかりました。これは、がんの早期発見の可能性とともに、治療の選択肢が増えることを意味します。
また、この研究では、AI モデルが異なる医師間の読影の一貫性を向上させるのに役立ち、結果の信頼性を平均κ = 0.65 からκ = 0.74に向上させることも示されました。どのような医師でも、常に画像の解釈に一貫性をもつことは難しく、ばらつきを減らすことは、診断の質を個人間でより統一できることにつながります。
また、AI を用いたアプローチは、検診プロセスの効率化にも貢献します。実際に、今回の研究から、AI を用いたアプローチは、医師による追加確認が必要なマンモグラフィの数を71 % も大幅に削減出来る可能性が示されました。これは、医療システムへの負担を軽減し、患者への対応などを含む、医師や看護師のより効率的で効果的な働き方を可能にします。
第2期戦略的イノベーション創造プログラム:「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」のプログラムディレクタとして、本共同研究の開始に尽力された、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所理事長中村祐輔氏は、以下のように述べています。
”乳がんの早期発見はがん死を減らすために非常に重要な課題です。しかし、現在の日本の医療従事者は「働き方改革」の中で、仕事量が減らず、過度な負担が強いられています。今回の共同研究により、人とAI が共存し、その両方の観点で医療現場に良い影響をもたらすことができる可能性が明らかとなりました。現在、AI は著しく発展をとげ、様々な分野で人の働く効率を改善する可能性を示唆しています。この共同研究結果が、技術と社会の発展を後押しし、より質の高く、効率的で、患者さんに寄り添った医療が創造されていくものと期待しています。”
また、前がん研有明病院 副院長乳腺センター長として本共同研究を推進された、社会医療法人博愛会相良病院病院長大野真司氏は、以下のように述べています。
”乳がん検診の中心となるマンモグラフィ検診では、高い精度管理とともにマンモグラフィ読影の人的負担が大きな課題になっています。欧米では、すでにマンモグラフィ読影にAI を活用した実績がいくつも報告されていますが、人種間での乳房の状況やデータに異なりがあることから、日本人におけるマンモグラフィへのAI の有効性はまだ明らかになっていませんでした。本研究は多くの日本人女性を対象とした研究結果であり、乳がんマンモグラフィ検診へのAI の活用によって、課題となっている精度の向上と人的負担の軽減を達成する未来のマンモグラフィ検診の姿を示すことができたものと考えます。”
がん研有明病院の臨床専門家とGoogleの密接な連携により、本研究結果は、日本の乳がんマンモグラフィ検診の実践に沿ったAI の活用の有用性を示すことができました。
がん研有明病院は、今後もAIを活用した診断技術の発展に努力してまいります。
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公益財団法人がん研究会有明病院(がん研有明病院)とGoogleは、日本における乳がんの早期診断と疾病管理の発展のために、AI を活用した乳がん検診の研究に向けて共同研究契約を2021 年の11 月に締結しました。 Googleは、米国と英国の専門家と共同で、検診用マンモグラフィから乳がんを特定するための機械学習モデルを開発し、2020 年に学術誌「Nature」に発表(英文)しており、がん研有明病院はGoogleと共同でこの機械学習モデルの有効性を日本人で検証してまいりました。 このたび、共同研究の結果から、乳がん検診の精度と検診プロセスの効率を向上させる結果が得られ、Radiology Advances 誌において発表されました。 発表ページ:https://academic.oup.com/radadv/article/1/2/umae011/7667296
乳がんは日本人女性で最も罹患数の多いがんで、毎年約9.7万人が診断されています。乳がん死亡数においては、他の先進国では1990年以降減少しているにもかかわらず、日本においては増加しています。マンモグラフィによる集団検診は、乳がんを根治治療が十分可能な早期の段階で発見できますが、残念ながら日本での乳がん検診受診率は約47%であり、欧米の75%以上と比較しても低いのが現状です。また、日本では検診マンモグラフィを異なる読影医により二重読影を行うことが推奨されており、今後検診数が増加すると読影医が十分対応できなくなる可能性があります。そこでAIを用いた乳がんスクリーニングシステムを用いることで、医療基盤拡大に貢献し、早期での乳がん診断に役立つことが期待されます。
今回の共同研究では、2007 年から2020 年の間にがん研有明病院乳腺センターおよび健診センターで撮影され、個人が特定されないよう適切な匿名化を施した女性のマンモグラフィ画像を使用し、AI モデルのパフォーマンス分析を行いました。
現在、日本におけるマンモグラフィのスクリーニングシステムで異なる読影医による二重読影が推奨されています。今回の研究では、この方法とAI モデルを「セカンドリーダー」として活用する方法を比較しました。AI モデルが医師とは別にマンモグラフィ画像を確認し、AI と最初の医師の見解が一致しない場合にのみ、2人目の医師による確認を採用しました。
この結果、AI モデルを用いたスクリーニングシステムは、乳がん検出の精度を7.6 % 向上させることがわかりました。これは、がんの早期発見の可能性とともに、治療の選択肢が増えることを意味します。
また、この研究では、AI モデルが異なる医師間の読影の一貫性を向上させるのに役立ち、結果の信頼性を平均κ = 0.65 からκ = 0.74に向上させることも示されました。どのような医師でも、常に画像の解釈に一貫性をもつことは難しく、ばらつきを減らすことは、診断の質を個人間でより統一できることにつながります。
また、AI を用いたアプローチは、検診プロセスの効率化にも貢献します。実際に、今回の研究から、AI を用いたアプローチは、医師による追加確認が必要なマンモグラフィの数を71 % も大幅に削減出来る可能性が示されました。これは、医療システムへの負担を軽減し、患者への対応などを含む、医師や看護師のより効率的で効果的な働き方を可能にします。
第2期戦略的イノベーション創造プログラム:「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」のプログラムディレクタとして、本共同研究の開始に尽力された、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所理事長中村祐輔氏は、以下のように述べています。
”乳がんの早期発見はがん死を減らすために非常に重要な課題です。しかし、現在の日本の医療従事者は「働き方改革」の中で、仕事量が減らず、過度な負担が強いられています。今回の共同研究により、人とAI が共存し、その両方の観点で医療現場に良い影響をもたらすことができる可能性が明らかとなりました。現在、AI は著しく発展をとげ、様々な分野で人の働く効率を改善する可能性を示唆しています。この共同研究結果が、技術と社会の発展を後押しし、より質の高く、効率的で、患者さんに寄り添った医療が創造されていくものと期待しています。”
また、前がん研有明病院 副院長乳腺センター長として本共同研究を推進された、社会医療法人博愛会相良病院病院長大野真司氏は、以下のように述べています。
”乳がん検診の中心となるマンモグラフィ検診では、高い精度管理とともにマンモグラフィ読影の人的負担が大きな課題になっています。欧米では、すでにマンモグラフィ読影にAI を活用した実績がいくつも報告されていますが、人種間での乳房の状況やデータに異なりがあることから、日本人におけるマンモグラフィへのAI の有効性はまだ明らかになっていませんでした。本研究は多くの日本人女性を対象とした研究結果であり、乳がんマンモグラフィ検診へのAI の活用によって、課題となっている精度の向上と人的負担の軽減を達成する未来のマンモグラフィ検診の姿を示すことができたものと考えます。”
がん研有明病院の臨床専門家とGoogleの密接な連携により、本研究結果は、日本の乳がんマンモグラフィ検診の実践に沿ったAI の活用の有用性を示すことができました。
がん研有明病院は、今後もAIを活用した診断技術の発展に努力してまいります。
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(2024/06/19 14:00)
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