強い腰の痛みで疑う化膿性脊椎炎
診断の遅れが命取りにも
高齢者の腰痛の原因の一つに化膿(かのう)性脊椎炎がある。高齢化と、糖尿病や慢性腎臓病などで免疫力が低下している人の増加に伴い、化膿性脊椎炎も増えている。初期診断が治療の鍵となるこの病気について、近畿大学医学部付属病院(大阪府大阪狭山市)整形外科の宮本裕史准教授に聞いた。
安静にしていても、徐々に痛みが悪化
▽安静でも痛みが悪化
化膿性脊椎炎は、脊椎(背骨)が細菌感染により炎症を起こし、膿(うみ)がたまる病気だ。へんとう炎や中耳炎、尿路感染症などを先に発症し、それを引き起こした黄色ブドウ球菌などの細菌が血流に乗って脊椎に運ばれ、炎症を起こす。高齢者に多く、糖尿病やがん、透析治療などで免疫の働きが低下していると、特に発症しやすくなる。
脊椎は頸椎(けいつい)、胸椎、腰椎などで構成されるが、腰椎への感染が多い。宮本准教授は「一般的な腰痛は、体を動かすと痛みが生じ、安静にしていれば治まりますが、化膿性脊椎炎の場合は常に強い痛みがあります。安静にしても痛みは取れず、徐々に悪化していくことが特徴です」と説明する。
発熱を伴うこともあり、たまった膿が脊髄(脊椎を通る神経)を圧迫すると脚にまひが生じる。「頸椎(けいつい)や胸椎に感染した場合、まひは広範囲に及びます。診断が遅れると、敗血症という深刻な状態から死に至ることもあります」と宮本准教授。
▽入院して抗菌薬を投与
化膿性脊椎炎が疑われる場合は、磁気共鳴画像装置(MRI)による検査で感染部位を調べ、血液を培養して菌を特定する。治療には安静が必要なため、入院となる。感染を起こしている菌に基づいて選択された抗菌薬を点滴で投与し、症状が落ち着けば飲み薬に替える。薬の効果を判定するために血液検査を行い、血中の炎症反応を確認する。症状が改善しても、菌がいなくなるまで2カ月の入院を要するケースもある。
抗菌薬が効かないときや、まひが生じている場合は手術が選択される。手術では、炎症を起こしている部位を切除し、膿をかき出す。
宮本准教授は「化膿性脊椎炎は放置すると命に関わる腰痛の一つです。安静にしても治まらない持続的な腰の痛みがあれば、すぐに整形外科を受診してください」と、早期の受診と治療の重要性を強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/05/07 06:00)