薬で起こる腎機能の低下
鎮痛薬などが原因に
薬の多くは腎臓でろ過されて尿と一緒に排せつされるため、腎臓は薬の影響を受けやすい。腎機能の低下や腎障害(薬剤性腎障害)を引き起こすことがあり、特に高齢者ではリスクが高い。筑波大学付属病院(茨城県つくば市)副院長で腎泌尿器内科診療グループ長の山縣邦弘教授に話を聞いた。
薬剤性腎障害の原因となる薬剤
▽自覚症状のない場合も
「腎臓は、大量の血液をろ過して体内の不要物を尿として排せつする機能とともに、血液中の電解質濃度の調節、さらには赤血球の産生や血圧調節をするためのホルモンの分泌などさまざまな機能を有します」と山縣教授。高齢者では加齢に伴い腎臓の機能が低下している場合も多く、薬剤性腎障害を発症しやすい。
厚生労働省の研究班による調査では、原因薬剤で最も多いのが、さまざまな痛みに対する鎮痛薬として使われる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で全体の25.1%を占める。それに抗がん剤(18.0%)、抗菌薬(17.5%)、造影剤(5.7%)が続く。
薬剤性腎障害の中で典型的なのが中毒性腎障害で、薬自体の毒性などが原因となって腎障害を引き起こす。しかし実際には薬剤の影響で腎臓の血流が減少することなどにより、もともと腎機能の悪い高齢者などの腎障害が顕在化してくるケースが極めて多い。尿の減少やむくみ、食欲低下などの症状が表れるが、自覚症状がないこともある。また、薬に対するアレルギーが原因となって腎障害を引き起こす場合もある。
▽通院中も定期健診を
腎機能低下の有無は、血液中のクレアチニン値検査で判断できる。山縣教授は「定期通院中の場合、検査は必要ないと考えている人が少なくありません。しかし、全く自覚症状を伴わないまま腎機能障害が進行することも珍しくない。高齢者で服薬中の場合には数カ月に1回、新たに薬剤治療を開始する場合にも血清クレアチニン検査で腎機能の確認をしてほしい」と強調する。
薬剤性腎障害を防ぐには、自身の腎機能を把握しておき、医師の指示通りに薬剤を服用するほか、常に脱水に気を付けたい。山縣教授は「脱水状態になると、薬が腎臓の中で濃縮されて腎臓に負担がかかること、腎血流が容易に低下することなどで腎障害を来しやすくなります。普段から水分を十分取るようにしましょう」と注意を促す。また、「過去にアレルギーを起こした薬剤は、自分自身でメモに残して忘れないこと」と、自身でも注意を怠らないことが重要だとしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/05/26 07:00)