どの乳幼児にも起こり得る小児腸重積症
見落とすと命に関わることも
小児が腹痛や嘔吐(おうと)を訴える病気は多数あるが、早急に治療を開始しないと命に関わるものが存在する。その一つである小児腸重積症は、回腸(小腸の終末部分)が大腸側にはまり込み、腸管が閉塞(へいそく)するため腹痛や嘔吐が起こる。乳幼児の中でも特に1歳未満の乳児に多い。大半はなぜ起こるか分かっていない。つまり、どの乳幼児にも起こり得る病気だ。
▽時間とともに症状増幅
大阪市立大学医学部付属病院(大阪市)小児外科の堀池正樹医師によると、大半の腸重積症は、結腸に近い小腸壁内に存在するリンパ組織がウイルス感染などによって腫れた結果、大腸側にはまり込み、その腫れがストッパーになって、はまり込んだ腸が抜けにくい状態になっているという。
非観血的整復術(右)で、はまり込んだ腸のほとんどが改善(左)
このとき間欠的な腹痛が起こり、「おなかが痛い」と言えない赤ちゃんは不機嫌になることで腹痛のサインを示す。
また、腸がふさがることで胃に圧がかかり、嘔吐を引き起こす。腸と併せて腸に血液を送る腸間膜も一緒にはまり込むため、経過とともに腸の血流が悪くなり腸壁がむくみ、出血して便に血が混じるようになる。
さらに経過すると、腸の壊死(えし)を招き、腸に穴が開く腸穿孔(せんこう)や腹膜炎を来し、持続的な激しい腹痛と高熱を発症、最後には敗血症性ショック状態から死に至ることもあるという。
▽早めに受診を
軽症であれば、造影剤入りの生理食塩水1リットル程度をおよそ1メートルの高さから肛門に注入する。はまり込んだ腸部分に圧をかけて、X線透視下で観察しながら腸の重なりを戻すのだ。この非観血的整復術と呼ばれる治療で、ほとんどのケースが改善するという。重症例やこの治療で改善しない場合には、手術(観血的整復術)で腸の重なりを戻す必要がある。
堀池医師は「小児腸重積症は放置すると重症化する怖い病気ですが、治療法は確立しています。この病気が疑われた時、速やかに小児を扱う医療機関を受診すれば、大事に至ることはありません。早めの受診が重要な病気だという意識を持っておくことが必要です」と話す。
早く気付くにはどうしたらよいか。堀池医師は「腸重積症で見られる不機嫌は、空腹時や眠気がある時のものとは異なります。数分から数十分程度の間隔で不機嫌になり、いくらあやしても良くならないことが多いです。嘔吐してもすっきりすることはなく、経過とともにぐったりして、顔が青ざめ、胃の内容物以外に緑色の胆汁が混じったものを吐くようになります。いつもと様子が違う、何かおかしいと感じたら、ちゅうちょせずに受診してください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/06/20 16:30)