医学生のフィールド

ハーバードBS風の授業を医学生も模擬体験
~起業した医師が主宰する「山本雄士ゼミ」~

 ◇リーダーシップの取り方についても学ぶ

 ―リーダーシップについても学べるのですか。

 ゼミの講義風景(山本雄士ゼミ提供)

  山本氏 ディスカッションの中で、そもそもリーダーシップとは何かを考えさせます。

 もともとカリスマ性のある人がリーダーをやると思いがちなのですが、例えば、あえてリーダーが黙ることで周りをしゃべらせる方法もあります。リーダーシップの取り方は多様であることを教えます。

 そして、リーダーである限り、課題に対して自分で判断して自分で道筋を決め、自分で段取りをつけてやらなければいけないということを教えます。

 扱っている題材のリーダーに関するディスカッションで、「あなたがもしその場にいたら、本当に自分でやれるか」と質問すると、みんな答えに詰まります。自分自身に対してリーダーシップを取っていないことに気付きだすわけなんです。

 HBSに限らず、米国の教育では、小さいころから、常に主張とその根拠を示せというトレーニングを受けているようで、自分の主張をどのように伝えて、どうみんなを巻き込んで納得させるかを教育されているんです。

 私みたいな日本人がそういうところでしゃべると、「おまえの話の主語は誰なんだ」と言われてしまい、「あっ、これって自分で考えたことがなかった」と思います。私がビジネススクールに行った時は、「30年も考えることなく生きてきたんだな」と衝撃を受けました。

 ―学べるのはビジネスよりももっと根本的なことですね。

 山本氏 自分も今起業しているから思うんですけど、結局、経営するということは、従業員の生活を背負わなければいけないから、そのときに受けのいい判断なんかないんですよ。自分があとで後悔しない判断をし続けないと責任を取り切れない。その判断軸がみんなの共感を得られるものであれば、大きな事業を生むし、そうでなければ大した事業はできません。

 自分もビジネススクールでは、そもそも考えるということがどういうことなのか、を思い知らされる2年間でした。

 ◇和気あいあいとした雰囲気で議論

 ケーススタディーでは常に課題が投げかけられ(山本雄士ゼミ提供)
 ―医学生へのメッセージはありますか。

 山本氏 まず、なぜ自分が医学部にいるのか、考えてみてほしい。勉強できたらからたまたま入ったというのは、入学時には仕方がないとしても、社会の中で医師免許は圧倒的に強いし、守られているんです。

 医師という職業が、いかに素晴らしく恵まれた立場にあるか、そうした資格を持った自分が社会で何をするべきかを真剣に考えてほしいと思います。

 ―ゼミ長からも、一言お願いします。

 柏原さん 「山本ゼミって何やってるか分からない」とよく言われます。そして「ハーバードビジネススクールのケースを使って先生とディスカッションする」と説明すると、「強いね!」という返事が返ってくることもあります。

 初めはハードルが高いと思われがちなのですが、参加してみると、和気あいあいとした雰囲気で、山本先生はとてもフランクに接してくださいます。もちろん、大人数の前で発言するときは緊張もしますが、その緊張感がかえって心地よいと感じることもあります。

 ゼミ終了後の懇親会で、社会人の方、他大の学生といった、普段話せないような方々と話せる、という楽しみもあります。どの回も、初参加の方が大勢いますので、ちょっと遊びに行ってみよう、という感覚で気軽に参加していただければと思います。(記事の内容、肩書などは取材当時のものです)

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