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多様な人材で国際化に対応―大阪市立大学医学部
「智・仁・勇」で一貫した教育

 大阪市立大学医学部は、JR新大阪駅から大阪メトロ御堂筋線で約20分、天王寺駅からほど近く、日本一の超高層ビル「あべのハルカス」に近接する好立地にある。1944年に大阪医学専門学校として設立、55年に新制医科大学が大阪市立大学に編入され、現在に至る。医学部の教育方針やカリキュラムは、論語で三徳とされる「智・仁・勇」の基本理念に基づいて構成され、昨年受審した国際認証評価においても高い評価を受けた。大畑建治医学部長は「国際化に対応するには、いろいろな人の考え方を理解できる医師が必要。学生時代から、さまざまなコミュニティーに参加して、多様性を学んでほしい」と話す。

医学部学舎の玄関前にある3女神像

医学部学舎の玄関前にある3女神像

 ◇国際交流を重視

 医学部学舎の玄関前には、「智・仁・勇」の三つの基本理念を示す3女神像が並んでいる。智の女神は書物、仁は薬つぼ、勇は月桂冠をそれぞれ手に持っている。

 「智は知識、仁は人に対する慈しみの心、勇は実行する勇気を指し、この三つを持つことを目指しましょうということです。人はどこか一つに偏ってしまいがちですが、入学から卒業まで三つを実践するよう一貫した教育を心掛けています」

 入学後早期に臨床実習を行い、医療現場に触れる機会を設けているほか、4~6年生には学生が医療チームの一員として実際の診療に参加するクリニカルクラークシップを導入している。

 国際交流を積極的に行い、毎年30人以上が海外留学するほか、海外からも年間約50人が学びに来るという。国際交流を支援するための組織として寄付金で運営する一般社団法人・大阪国際医療機構も設立、大畑医学部長が代表理事を務める。

 「海外から来る学生はめちゃくちゃ賢くて、ものすごく勉強します。海外の学生と交じり合うことで、いい刺激になる。学生同士が交流するときの資金も補助していて、非常に好評です」

 大畑医学部長が率いる脳神経外科では、毎朝のカンファレンスを英語で行っており、海外から学びに来た医師や、世界にはばたく日本の医師たちの鍛錬の場となっている。

インタビューに応える大畑建治医学部長

インタビューに応える大畑建治医学部長

 感染症対策に伝統

 大阪市立大学医学部は、古くから肝炎結核などの感染症対策に取り組んできた伝統がある。地域医療での経験を生かし、国際協力にも尽力。同大学の南西太平洋ヴァヌアツでのマラリア撲滅への取り組みが評価され、今年5月には科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)が国際協力機構(JICA)と連携して実施する地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に、同大学院医学研究科寄生虫学の金子明教授が代表を務める「熱帯アフリカのマラリア撲滅を目指したコミュニティー主導型統合的戦略のための分野融合研究」が採択された。

 「(5年間で計4.7億円の研究費がつく)国家間協定の下で行う非常に大きい事業です。医学部だけでなく経済学部とも協力して文理横断にマラリア撲滅を目指す活動です」

 マラリアは日本ではあまりなじみのない病気だが、インバウンドの増加に伴い、マラリア感染者が入国してくる可能性もある、マラリア流行の終息に向けた取り組みに、同大学の感染症対策の実績が生かされている。

 ◇バイオバンクを構築

 2014年4月には「あべのハルカス」21階に公立大学法人初の健診医療センター「MedCity21」を設立。医学部付属病院の医師が質の高い健診を提供している。受診者約5万2000人の大規模臨床データを蓄積した健診レジストリと、さらにその中から同意を得て約1万8000人の血液やDNA等の生体サンプルを各種臨床検査データと連結して保存したバイオバンクを構築した。

 「バイオバンクを基にした臨床研究や産学連携事業の成果が出始めています。内視鏡検査をしても正常なのに胸やけがする機能性ディスペプシアなど、健康と病気の間のグレーゾーンの研究を進めています」

 病気になってから治療するのではなく、バイオマーカーを用いて、将来起こりやすい病気を発症前に診断、予測して介入していく予防医療、先制医療の考え方は健康寿命の延伸や医療・介護費抑制にも役立つものとして注目されている。

 このほか、梅田にある健康科学イノベーションセンターでは、1回500円で疲労測定を行う。また、大阪市大が調査分析を行った淀川区の学童を対象とした睡眠調査では、厚生労働省の主催する第6回健康寿命をのばそう!アワード(母子保健分野)で淀川区が子ども家庭局長賞、自治体部門優良賞を受賞した。

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