研修医こーたの出来たてクリニック

エイズは制圧可能な疾患に
差別や偏見、今も 12月1日は世界エイズデー

 12月1日は世界エイズデーです。そのため、エイズのまん延防止、エイズ患者やヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者への差別および偏見解消を目的としたイベントが世界中で開催されます。私も「名古屋駅周辺でコンドームを配布しながらエイズ予防について訴える」というイベントにボランティアとして参加する予定です。多くの団体がさまざまな活動をしていますが、まだまだ日本ではエイズに対する理解が進んでいるとは言えません。

エイズを正しく理解し、正しく予防しましょう

エイズを正しく理解し、正しく予防しましょう

 ◇感染に気づくのは困難

 エイズは、HIVというウイルスが性交渉などで感染して起こる病気ですが、感染から発症するまで数年から数十年かかるとされています。自覚症状もほとんどないため、感染に気づくのは困難です。感染に気づかずに時間が経過してしまうと免疫力が低下し、普通なら病気を起こさないような病原体によって重篤な感染症が起きてしまいます。

 ◇大切な二つの予防策

 ではエイズに対して、私たちはどのように対応すればよいのでしょうか。最も大切なのは、しっかり予防することです。まずは感染しないこと。つまり1次予防=用語説明1=が重要です。

 不特定多数とセックスをしないという「ノーセックス」、パートナーとお互いに感染していないことを確認してからセックスをする「セーフセックス」、コンドームを正しく使用してセックスを行う「セーファーセックス」。これら三つをしっかりと実践することがとても大事です。

 そして早期発見し、治療を継続すること。つまり2次予防=用語説明2=も大切です。エイズの治療は近年めまぐるしいスピードで進歩しています。早期診断で治療を続けていれば、体内のウイルスをごく微量に抑えることができ、性行為をしてもパートナーに感染しないという報告も多数発表されています。

 日本エイズ学会もこれらの報告を支持しており、エイズはもはや不治の怖い病ではなく、治療を継続すれば症状を起こさない病気になっています。

 ◇就職で不利、診療拒否も

 HIVの感染力はとても弱く、日常生活でうつることはありません。エイズも対策次第で制圧可能な疾患となっています。しかしエイズ患者さんたちは、就職で不利になったり、医療機関に診療を拒否されたりと、社会からひどい扱いを受けることもしばしばあります。エイズに関して、国民全員が正しい理解をし、エイズ患者さんへの差別や偏見が解消されることを心から願っております。(研修医・渡邉昂汰)

【用語説明】
(1)1次予防 病気にならないように努める行為。予防接種や正しい生活習慣などがこれに当たる。
(2)2次予防 病気になった人を早期発見そして治療し、病気の進行を抑え重症化しないように努める行為。健康診断や治療などがこれに当たる。

【参考文献】
Alison J Rodger et al. Risk of HIV transmission through condomless sex in serodifferent gay couples with the HIV-positive partner taking suppressive antiretroviral therapy (PARTNER): final results of a multicentre, prospective, observational study. The Lancet. 2019 June, Volume 393, Issue 10189, Pages 2428-2438.


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