AYA世代のがん、初の分析
ひとくくりせずに年齢で対応を
◇ひとくくりは難しい
国立成育医療研究センター・松本公一小児がんセンター長
AYA世代のがんは、年齢によって大きく二つに分類される。国立成育医療研究センターの松本公一・小児がんセンター長は「AYA世代のがんをひとくくりにして対策や患者支援策をまとめるのは、やはり難しいことが見えてきた」と、報告書の結果を分析する。
理由として、30代に多い乳がんや子宮頸がんは成人でも多くの患者がいて、治療法も成人に準じる。一方、15歳から20歳では白血病やリンパ腫、脳腫瘍など小児と同様のがんの種類が多い。
どのような治療をどれだけの期間行うかという治療計画も、体力が弱い高齢者が多い成人用ではなく、より強い治療が可能な小児患者に準じた形にした方が治療成績の良い場合もあるからだ。
◇がんを五つに分類
松本センター長は「あくまで私案」と断りながら、今回の分析に基づいてAYA世代のがんにいついて、(1)小児科や内科に共通ながん(2)成人にも比較的多く発病するがん(3)小児に多い発病部位や診断名が多彩な希少がんーなどを五つに分類。その上で、「類型ごとに、治療スタイルや支援策などを策定していく必要がある」と強調する。
AYAがんの類型=松本公一センター長提供
現在、厚生労働省は、小児がん拠点病院を中心にAYA世代への支援を進めていく方針を示している。
この点についても松本センター長は「患者同士が相談に乗るピアサポートの充実やソーシャルワーカーらも加えた多職種対応など、支援のきめ細かさや幅広さに関しては小児がん患者と同様に、という意味だと理解している。小児医療の守備範囲自体が一般的に15歳で区切られているのだから、AYA世代のがん患者全体を小児がん拠点病院で引き受けるのはキャパシティーの面でも難しい」と話す。
◇一機関では対応困難
AYA世代の中でも、年齢ごとに支援のニーズや課題は大きく異なる。前半に当たる20歳前後までは、就学から就職という問題も抱える。後半では、子どもをもうけることができるかどうかということが、男女を問わずに生じる。
一方、30代を中心としたAYA後半世代では、既に就職や結婚している場合が多く、仕事の継続や治療後の復職支援が大きな課題になる。妊娠と出産を考える年代だけに、病気や治療による不妊などについても、配偶者や家族を含め懸念が増す。
松本センター長はこのような問題を踏まえ、「単一の医療機関でこれだけ多様なニーズに対応するのは難しい」とし、患者への支援の観点からも「複数の医療機関で対応できる体制づくりが必要だ」と訴えている。(喜多壮太郎・鈴木豊)
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(2019/12/19 07:00)