治療・予防

高齢者の頭部外傷による出血 
抗血栓薬服用者は重症化のリスク 東邦大学医療センター大森病院循環器内科学 池田隆徳教授

 浴室で滑って転ぶ、階段を踏み外すなど、高齢者の転倒・転落事故は多い。頭部を打ったことが原因で、頭蓋骨の内側に出血(頭蓋内出血)が生じると、命に関わる危険性がある。特に、心筋梗塞や脳梗塞の予防のために血液をサラサラにする抗血栓薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用している場合は、大出血を起こすリスクが高まるため注意が必要だ。

 ▽頭部外傷患者の3割が服用

 高齢化に伴い、不整脈の一種である心房細動の患者が急増している。心房細動があると、心房の中で血液が停滞し血栓ができやすくなる。この血栓が脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせるのが脳梗塞だ。その予防のため、ワルファリンなどの抗凝固薬を飲んでいる心房細動の高齢患者は、20人に1人とも言われる。一方、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐため、アスピリンなどの抗血小板薬による治療を受ける患者も増えている。

 これらの抗血栓薬は、いったん出血すると血が止まりにくくなるという副作用がある。このため、転倒・転落事故で頭を打った時、頭蓋内出血を起こして重症化するリスクが高まるのだ。

 実際に、高齢の頭部外傷患者の約3割が、抗血栓薬の服用者だと報告されている。しかも抗血栓薬を飲んでいる人は、転倒・転落直後は症状が軽くても、その後急激に悪化することが多い。最初は問題なく会話ができても、頭蓋内出血がじわじわと進み、数時間後に意識を失う例もあるという。

 東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)循環器内科学の池田隆徳教授は「抗血栓薬を飲んでいる高齢者が転倒・転落し、いつもと少しでも様子が違うと感じたら、直ちに医療機関を受診してほしい」と呼び掛ける。そこで頭部コンピューター断層撮影(CT)検査をして出血が確認されたら、「症状がなくても、少なくとも24時間は医療機関で厳重に経過を観察するようにしましょう」と言う。

 ▽お薬手帳を常に携帯

 池田教授は「抗血栓薬の有無により、頭部外傷の経過は大きく異なりますし、抗血栓薬の種類によっても医療機関での対応が分かれます。出血を認める場合には、血が止まりにくくなっている状態を即座に元に戻す中和剤(ただし中和剤のある抗血栓薬は一部)を使用することもあります」と説明する。その上で、「高齢者やその家族は、服用している抗血栓薬の種類をよく理解しておく必要があります。緊急時にも医療関係者に伝えられるよう、お薬手帳を携帯することが望ましいですね」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)

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