治療・予防

緊急事態宣言、再延長も視野
専門家「新型コロナ対策緩めるな」

 新型コロナウイルスの新規患者数は減少傾向に入るようにもみられ、緊急事態宣言の対象となった自治体からは前倒し解除や延長しないよう求める声が上がっている。しかし、前回の緊急事態宣言でも解除後に患者が再度増加したこともあり、専門家は「新たに出現した変異株の存在もある。十分に感染を抑え込むまでは対策を緩めるべきではない」と訴えている。

 ◇下げ止まれば、再流行も

国際医療福祉大学の松本哲哉教授

 「昨年から今年にかけての感染拡大第3波のピークは、緊急事態宣言の再発出前後。前回と同じで、再発出前の患者急増のニュースが多くの人の行動変容を促したのが患者の減少に向けて作用し、これに緊急事態宣言が加わって2月に入ってから毎日の新規患者数が大きく減少した」-。ウイルス感染症に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉教授(感染制御学)はこう分析する。

 その一方で、「東京の新規患者数を例に挙げれば、1日300人前後で下げ止まっている。前回の流行の経験からも、ここで下げ止まってしまえば、いつ再流行するか分からない。最低でも1日100人を切るところまで抑え込むまで、現在の対策を続ける必要がある」と、くぎを刺す。

 ◇薄れる警戒感

にぎわう東京・吉祥寺の商店街

 松本教授が厳しい見方をするのは、前回の緊急事態宣言時と異なる点が幾つかあるからだ。一つは、この冬の感染は市中全体に広がり、患者が集団発生したクラスターも十分に追えていないため、対策を緩めると流行スポットを起点にすぐに再燃する危険性がある点だ。

 もう一つは、市民の意識の変化だ。国内の感染拡大から1年が過ぎたため、「良きにつけあしきにつけ、新型コロナについての情報が浸透した。重症化の危険性が少ないとされる若年層を中心に、警戒感が薄れている」と松本教授は危惧する。

 緊急事態宣言下にもかかわらず都内各所の繁華街の人出は増加傾向にあり、昼夜を問わず多くの若者などの姿を目にする。この状況で緊急事態宣言が解除されれば、さらに人出が増え、患者数が再度増加に転じることも予想される。

 ◇徹底的な抑え込みを

 医療機関では、重症患者を引き受けている高度医療機関を中心に、逼迫(ひっぱく)状態が続いている。東京都内の複数の大学病院ではいまだに満床状態で、改善の見通しは立たない。医療スタッフの疲労も蓄積しており、「体制を立て直し、次回以降の流行に備えるためには1カ月前後の『体制再編期間』が必要になる」と松本教授は話す。その上で、緊急事態宣言の再延長や新たな対策を追加してでも、感染を徹底的に抑え込むべきだ、と提言している。

 ◇ワクチン供給量に不安

 今後の新型コロナ対策の中心となることが期待されているワクチンについても、「決して手放しで喜んでばかりはいられない」と、松本教授は指摘する。接種が先行している諸外国からの報告によると、効果自体は予想以上と言える。しかし、それだけに世界各国の需要も大きく、日本にどの程度の量がどのようなタイミングで供給されるか、見通せない状況にある。人口も多い先進国以外の国への供給が始まれば、多数のワクチンをそちらに振り向ける必要が生じ、その分、日本国内への供給量は減る。「十分な集団免疫効果が得られるのは、早くて次の冬になるだろう。それまでは現在の流行対策を続けるしかない」。「それまでの間は規模の大小はあるが、今後も数度の流行を経験せざるを得ないだろう」と指摘する。(了)

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