50歳を過ぎたら注意―骨粗しょう症性椎体骨折
負担の少ない手術という選択肢も
高齢になると骨粗しょう症などで骨がもろくなり、せきやくしゃみといったささいな衝撃でも「椎体(ついたい)」と呼ばれる背骨を骨折することがある。東海大学医学部付属八王子病院(東京都八王子市)整形外科の山本至宏医長は「椎体はいつの間にか骨折していることが少なくない。50歳以降、特に閉経を迎えた女性は注意が必要です」と指摘する。
▽2割が1年以内に再発
起き上がるときや、寝返りを打ったときに背中や腰に強い痛みが生じたら、椎体骨折のサインだ。しかし、いったん起き上がると、痛くても何とか生活できるため見逃されやすい。
また、背骨がつぶれて背中が丸くなる(後弯=わん=変形)と、内臓が圧迫されて胃食道逆流症や肺炎などの合併症を起こしやすくなる。「腰痛がひどくなって動けなくなると、骨はますますもろくなり筋力も落ちて、次の骨折につながるという悪循環に陥ります」と山本医長。
実際、患者の5人に1人は、最初の骨折から1年以内に再び骨折する。そして、椎体骨折の数が増えるほど死亡リスクは高まるという。山本医長は「50歳以上のやせている女性や、若い頃に運動習慣がなかった人は、骨がもろく椎体骨折を起こしやすいのです」と指摘する。
▽セメントで骨を補強
治療の基本は、安静に過ごす保存的治療だ。これで70~80%の患者は治るとされるが、骨がつぶれた状態で固まるため、次の骨折を起こしたり、後弯変形が進んだりする。また、骨折後には骨がくっつかない「偽関節」や、下肢のまひといった神経症状を来すこともある。神経症状があれば脊椎を固定するための手術が適応となるが、体への負担が大きく高齢者には向かない。
そこで、より負担の少ない手術法として注目されるのが「経皮的椎体形成術(BKP)」だ。これは骨折した部位に隙間をつくり、医療用セメントを詰めて補強および固定するというもの。切開する傷口は約5ミリと小さく、手術時間は約20分。出血も少なく、高齢者でも安心して受けやすい。
BKPは2011年1月に保険適用となったが、この手術を受けられる施設は限られる。八王子病院では15年からの4年間で約300人に実施され、保存的治療よりも再骨折の発生が抑えられているという。
山本医長は「2週間ほど安静にしていても背中の痛みが引かなければ、椎体骨折の可能性があるので専門医に相談してください。また、椎体骨折では、骨粗しょう症治療薬をきちんと服用して次の骨折を予防することが大事です」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/03/13 07:00)