Dr.純子のメディカルサロン

今を大事に生きるアマゾンの森の暮らし
~先住民族の自主的な保護活動を手助け~

 NHK「ひょっこりひょうたん島」「おかあさんといっしょ」などの番組で美術を担当していた南研子さんは1989年、英国の歌手スティングが「アマゾンを守ろう」という世界ツアーで来日した際、同行していたアマゾン先住民の長老、ラオーニ・メトゥティレさんに出会い、それを機に「熱帯森林保護団体(RFJ)」を立ち上げ支援活動を開始しました。コロナ以後、今アマゾンはどうなっているのかなど最近の状況をうかがいます。

(聞き手・文 海原純子)

熱帯雨林の中をうねるように流れるアマゾン川


 ◇森が消え、進む気候変動

  この2年はブラジルに行けていないんですよね。新型コロナで先住民保護区は2020年から昨年12月終わりまで外部から入れないように封鎖されているんです。私は1989年から自然保護とアマゾンの先住民の存続支援ということで34回、通算2千日以上現地に滞在してきました。支援というのはちょっと視察して伝えるということではなく、自分がそこで体験して、それを伝えることが責任だと思っているんです。

 今の大統領になってからは経済優先になっているのですね。森があると、どれくらいの金になるか、というような。昨年は日本の本州の10分の1くらいのアマゾンの森が消えました。

 海原 アマゾンの森は、木が伐採されて牧場や大豆畑、サトウキビ畑、鉱物採掘場などに変わるんですよね。サトウキビを原料とするエタノールを得るため、大豆の殻は鶏のえさにするために、こうした伐採が行われていると聞きました。これにより気候変動が進んでいるわけですよね。

アマゾン川流域では開発が進んでいる

  アマゾンの大豆畑で取れた大豆の殻をえさにした鶏がアメリカ経由で加工食品の原料として日本に輸入されたりしているわけです。実際、私が行くたびに、前は森だった所が、「えっ、ここが大豆畑に」ということが何度もあります。

 海原 気候の変化を感じられることも多いでしょうね。

  最近は、温度を測ると昼間は50度くらいです。夜は10度くらいになります。湿度は10%くらいです。乾燥化が急に進んでいます。そんなふうになったのは、ここ5~6年ですね。その前はそんなことはなかったですね。前は日陰に行くと、じめっとしていたから。地球上の酸素の供給減であるアマゾンの森が消えているということです。これは地球規模の問題ですね。

 これにより火災が起こりやすくなり、一度火が付くと手が付けられなくなります。火が燃えて、またCO2が発生します。日本と2万キロ離れているから関係ないと思いがちですが、関係が深いのですね。次世代にとって大きな問題ですよね。いずれ酸素を買うような時代になるかもしれないと思ったりしています。

乾燥化が進み、火災が起こりやすくなった

 ◇「うつ」も「寝たきり」もない暮らし方

 海原 そこで暮らす人は大変ですよね。適応するのが。

  たくましいです。

 海原 以前、南さんが大学の講義で自然保護とアマゾンについてお話しされた時、「アマゾンには、うつもがんも心臓病も寝たきりも自殺もないですよ」とおっしゃったのが強く印象に残っています。

  それは今も同じですよ。ただ、最近は町に行って町の食べ物を食べる人に変化が出てきています。食べる物は大事ですね。もともとは自給自足していたわけですが、最近は状況も変わり、外からの食べ物が入るのですね。でも寝たきりはないし、だからと言って早く死んでいるわけではないですね。ラオーニさんは、もう100歳を超えていると思うけれど元気ですね。それは多分、年を数えるということがないからかもしれないと思っています。

 海原 なるほど。数を数えるとそれに縛られますよね。

  数字というのは管理ですね。管理しやすい。幾つになったら学校に行くとか、幾つだからこうしようとか。年に縛られて老けていくということがありますよね。潜在意識になる。あとは、リタイアがないんです。幾つになっても役割があるんです。文字がないので、みんな自分の脳に記憶しないといけないんですね。

 海原 役割や自分が社会参加することで寝たきりにならないんでしょうね。

  あとは緊張感ですね。ボケてる暇がないですね。夜、外のトイレに行く時、「気を付けて行けよ。ヒョウに襲われないように」とか。(笑)

 海原 それは怖いですね。緊張を超えて怖くて眠れなくなりそう。

地元の若者たちによる消防団

 ◇押し付けではない支援の形

  あとは、子どもを私物化していないですね。個の確立がされていて、10歳くらいの子どもが小さな子どもに教えたりするんですね。大人になるための通過儀礼もあります。男の子は13、14歳くらいの時、呪術師が作った毒性の強い飲み物を飲むんですね。女の子は初潮があると1年間、昼間は1人で部屋に閉じこもり、自分と向き合う時間を作るわけです。それを通過したものが大人というわけです。

 海原 それは命を落とすこともあるでしょうね。親は手助けできないんですか?

  男の子はそこで死ぬことがあります。女の子は、食事を外から差し入れするんですね。ただ、それ以外は何もできないです。でもこうした通過儀礼を通ると、みんな顔が変わりますね。過酷な中で生きて行くための個が確立されたという感じですね。

 海原 成人になるための通過儀礼は厳しいですね。でもそれを通過したことで生きて行く自覚が生まれるのでしょうね。

 しかし南さんのアマゾン支援、すごいエネルギーだなあと感嘆します。言葉も通じず、トイレもお風呂もない中で2千日過ごすとは。先住民族の方たちとの生活を本で読ませていただくと、「本当にすごいなあ」と何度もつぶやいています。

採取したはちみつを持つ養蜂士

  特別に自分ですごいとは思わないのですが、自然に縁を大事にしながらやってきました。こちらの価値観を押し付けるのではなく、自分たちが自主的にしたいということを手助けするのが支援だと思っています。今、二つのプロジェクトがあります。一つは火事が大きくなるのを防ぐために地元の若者たちが消防団を作って頑張っていることへの支援。もう一つは、いずれ貨幣制度が入ってきた時に大きな企業に土地を買い占められたりしないように、はちみつを作り始めました。

 海原 はちみつ、すてきですね。

  ここには、ここにしか生えていない植物があるんです。その植物から取れるはちみつを流通させることを計画しています。

 海原 はちみつ、楽しみです。

 ◇南研子(みなみ・けんこ)さんプロフィル

 特定非営利活動法人「熱帯森林保護団体(Rainforest Foundation Japan:RFJ)」代表。1970年、女子美術大学卒業。89年5月、RFJを設立。92年から2019年まで34回にわたりアマゾンのジャングルで先住民と共に暮らし、さまざまな支援活動を行っている。著書に「アマゾン、インディオからの伝言」「アマゾン、森の精霊からの声」(共に、ほんの木刊)がある。

アマゾン流域の暮らしを守る活動を続ける南研子さん(中央)

 ◇取材後記

 以前、南さんにお会いした時、「アマゾンでは、一日が小さな一生なんですよ」とおっしゃったのが心に残っています。

 日が昇ると始まり、日が沈むと終わる、この一日、この一日を大事に過ごすことの積み重ねが人生。あす何があるか分からない。でも今生きているこの命を大事にして、今を大事に生きる。これが過酷な自然を生きるアマゾンのおきてなのだと思います。そしてそれは私たちも同じなのに、それに気が付いていないだけなのでしょう。(了)

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