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機能性ディスペプシア患者は食事画像を見るだけで脳に負担がかかることが明らかに―世界初 ~精神的ストレスを可視化し、臨床現場に役立てる~

【概要】
 川崎医科大学 健康管理学教室の勝又諒講師、鎌田智有教授、川崎医療福祉大学 リハビリテーション学部 視能療法学科の細川貴之准教授は、機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia: FD)と過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)の患者を対象に研究を行い、FD患者が食事画像を見た際に脳活動が亢進することを世界で初めて明らかにした。
 本研究成果は、日本時間の8月12日(土)午前10時(協定世界時(UTC)8月12日(土)午前1時)に、Journal of Gastroenterology のオンライン版に公開された。


【研究の背景】
 FDやIBSの症状を抱えて困っている方は全人口の約10%と言われ、不登校・休職など日常生活に支障を来すケースも多い。また、通常の医療現場で行われる血液検査内視鏡検査、CT検査などでは異常が見つからず、病気であることが客観的に示されないために、周囲の人に苦しみが理解されにくいといった問題がある。
 精神的ストレスや脂肪分の多い食事が原因とされるものの、病気のメカニズムの解明は進んでおらず、病気の客観的診断法は確立されていない。MRI検査によりFD・IBS患者の脳血流が健常者と異なることは過去の研究で確認されているが、症状のある全患者に対し、測定に手間と時間がかかるMRI検査を実施することは困難である。そのため、世界中で患者と医療関係者の負担を減らすことを目的とし、容易かつ客観的にFD・IBS患者を判断する方法が研究されている。

【研究方法】
 FD・IBS患者と健常者に、脂肪分の多い(こってりした)食事と脂肪分の少ない(あっさりした)食事、その中間の食事の画像を計40枚、7秒ずつ見てもらい、脳の血流を測定するとともに、食事に対する好き嫌いを0~100点で答えてもらった。
 脳血流測定は、MRIと違い測定場所を選ばず、容易に脳活動が測定でき、導入コストもMRIに比べて格段に安い(100分の1以下)機能的近赤外分光法(fNIRS)を使用した。

【研究結果と考察】
 今回の研究で、以下の2点が世界で初めて明らかにされた。
FD患者は健常者やIBS患者と比較して脂肪分の多い食事を好まないことが
示された。

 FD患者では脂肪分の多い食事を食べるとすぐに症状が誘発されることから、
脂肪の多い食事に対する苦手意識が生じていると考えられる。

FD患者は食事画像を見た時の脳活動が健常者と比較して明らかに
亢進していた。

 特に左背側前頭前野で血流量が増加した。特定の食事後に腹痛を何度も経験したこと
で、どの食事画像を見てもストレスを感じるようになったことが推定される。


【今後の展望】
 “FD患者の脳には負担がかかっている”ことが広く認知されることで、これまで病気の客観的な指標がなく、その苦しみが周りの方に理解されにくかったFD患者が生きやすい環境づくりに役立つ。
 また、食事画像を見て脳の血流を測る客観的かつ簡便な今回の方法は、臨床現場でFD患者を見分ける新たな診断法の開発につながることが期待される。


【発表雑誌】
雑誌名:Journal of Gastroenterology オンライン版
(日本時間8月12日(土)午前10時(協定世界時(UTC)8月12日(土)午前1時)公開)

論文タイトル:Brain activity in response to food images in patients with irritable bowel syndrome and functional dyspepsia

著者:Ryo Katsumata, Takayuki Hosokawa, Noriaki Manabe, Hitoshi Mori, Kenta Wani, Katsunori Ishii, Tomohiro Tanikawa, Noriyo Urata, Maki Ayaki, Ken Nishino6, Takahisa Murao1, Mitsuhiko Suehiro, Minoru Fujita, Miwa Kawanaka, Ken Haruma, Hirofumi Kawamoto, Toshihiro Takao, Tomoari Kamada

URL:https://www.springer.com/journal/535

DOI番号:10.1007/s00535-023-02031-5


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