親指の付け根が痛む
~母指CM関節症(兵庫医科大学病院 樋口史典医師)~
手の親指(母指)の付け根のCM関節は、物をつまむ動作で大きく動く関節のため、手の使い過ぎや加齢によるダメージを受けやすい。
兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)整形外科の樋口史典医師は「母指CM関節症は40歳代以上の女性に多く、関節軟骨がすり減り、進行すると関節が変形する病気です。物をつまんだり、ペットボトルのふたを開けたりするときに、母指の付け根に痛みが出ます」と話す。
母指CM関節では関節がずれるケースも
◇軟骨がすり減る
母指CM関節は、母指の付け根の手首寄りにある骨「第1中手骨」と手首の小さな骨「大菱(だいりょう)形骨」の間にある。関節の骨と骨が向き合う面は、滑らかに可動するための軟骨で覆われている。
樋口医師は「母指CM関節症では、関節の内側を覆う滑膜に炎症を起こします。進行すると、骨と骨が直接当たって痛みが強くなり、第1中手骨がずれてその付近が膨らみ、指先の関節は反って『白鳥の首』のように変形してきます」と説明する。
主な原因は、手の使い過ぎや加齢とされ、外傷、リウマチなどの炎症性疾患でも起こる場合がある。また、女性では閉経後に関節の保護作用がある女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少し、手指の腫れや痛みに関係する可能性が分かってきた。
「母指CM関節症の原因は、男性では力仕事やけがが多いようです。女性はエストロゲン減少の影響も少なくないため、更年期を過ぎると、症状が落ち着く人もいます」
◇装具を活用
母指に力を入れる動作で痛むときは、安静にする。それでも痛みが治まらず、日常生活に支障を来す場合は、整形外科を受診するとよい。
診断は、患部の触診とレントゲン検査で行う。治療は、消炎鎮痛薬の湿布を貼り、CM関節を保護する装具を一定時間着け、できる限り手指を休ませる。効果が不十分な場合は、消炎鎮痛薬の内服、ステロイドの関節内注射を行う。「漢方や、エストロゲンと似た作用があるサプリメント(エクオール、健康保険適用外)の併用が効果的なケースもあります」
こうした保存治療を行っても痛みや炎症が強い場合は、金属のインプラントで関節を固定する手術、または大菱形骨を切除し、腱(けん)を使ってじん帯を作り直して関節を安定させる手術を検討する。
保存治療のポイントについて、樋口医師は「母指を使うときは、関節の痛みや腫れが出ないように装具を活用するなど、ご自身でもケアを工夫し、特に更年期の女性はつらい時期を乗り切っていけるとよいでしょう」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/09/25 05:00)
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