心アミロイドーシス
~手根管症候群から早期診断(信州大学医学部付属病院 関島良樹教授)~
アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が体内に沈着する病気「アミロイドーシス」。心臓に沈着すると「心アミロイドーシス」と呼ばれ、心臓の動きがだんだん悪くなるが、早期診断・治療によって進行の抑制や改善が期待できるという。
信州大学医学部付属病院(長野県松本市)脳神経内科の関島良樹教授は「高齢男性では、心アミロイドーシスに至る数年前に手根管(しゅこんかん)症候群を発症するケースが多くあり、これが早期診断のきっかけになります」と強調する。
野生型ATTRアミロイドーシスが疑われる患者の例
◇手術例の3割で診断
アミロイドのもとになる40種類以上のタンパク質のうち、トランスサイレチン(TTR)から作られるアミロイドによる病気をATTRアミロイドーシスと呼ぶ。全身にアミロイドが沈着する難病で、頻度の高い老化などが原因の野生型の多くは、関節・靱帯(じんたい)、心臓(心アミロイドーシス)の順に症状が表れる。
ATTRアミロイドーシスは、TTR遺伝子変異が原因の遺伝性と、野生型がある。「遺伝性は20歳代から幅広い年代に発症し、多くは足のしびれなどの末梢(まっしょう)神経障害を伴います。野生型は心臓の症状が出る前に、50~70歳代の特に男性で手根管症候群がよく見られます」
手根管症候群は、手首で正中神経が圧迫されて手のしびれや痛みが起こる。関島教授らが、原因不明の手根管症候群の手術を受けた男女100人を対象に、手術中に採取した組織を解析した結果、約3人に1人が野生型ATTRアミロイドーシスと診断された。
◇有効な新薬が登場
心アミロイドーシスは、動悸(どうき)や息切れなどの自覚症状、心電図、画像検査、血液検査などから疑われる。「心エコーで心臓の壁が厚くなっていたり、血中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が上昇していたりした場合は、骨シンチグラフィーという感度の高い画像検査や生検で心臓へのアミロイド沈着を確認します」
治療は、利尿薬の他、タファミジスという飲み薬が遺伝性と野生型に適用となった。タファミジスは、肝臓で作られるTTRを安定化させて心臓へのアミロイド沈着を軽減する。また、TTRの産生を抑えるパチシランやブトリシランが遺伝性に適用となった。
心アミロイドーシスは、新薬の登場により根本原因の治療が可能になった。関島教授は「診断が遅れると治療効果も限られるため、早期診断が重要です。手根管症候群など疑わしい症状がある患者さんは、アミロイドーシスの可能性も考えて整形外科、脳神経内科、循環器内科への相談を勧めます」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/01/06 05:00)
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