治療・予防

「メノポハンド」を知っていますか?
~更年期女性に多い手指の悩み~

 女性は月経が終わる(閉経=メノポーズ)前後の更年期を迎えると、体調が悪くなり、つらいことが多い。更年期障害と呼ばれ、のぼせやほてり、うつなどの症状は知られている。一方、更年期症状の中で、手指の痛みやしびれ、こわばりなどは「加齢によるもの」と軽視されがちだ。しかし、放置しておくと、症状がさらに悪化し、生活の質(QOL)の低下を招く恐れがある。

手指の痛みや変形は更年期症状の一つだ=大塚製薬提供

手指の痛みや変形は更年期症状の一つだ=大塚製薬提供

 ◇大きな障害に

 四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンターの平瀬雄一センター長は手指の不調が日常生活に及ぼす影響について、漢字の例えで分かりやすく説明する。「手偏の漢字は1300字以上ある。つまり、1300以上の動作ができなくなる。手がスムーズに動かないことがいかに大きな障害となるかを理解してほしい」と強調する。

 メノポハンド(更年期手)とは日本手外科学会による造語で、更年期以降に現れる手指の関節の痛みやこわばりなどの不定愁訴を指す。

 内科や神経内科、膠原(こうげん)病・リウマチ科、総合診療科、産婦人科などの医師100人を対象に実施したインターネット調査によると、メノポハンドや手指の不調と更年期症状との関連についての認知度は低かった。

手指の腫れは女性ホルモン低下が関係=提供:四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター

手指の腫れは女性ホルモン低下が関係=提供:四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター

 ◇電話相談多いメノポハンド

 女性ホルモンといわれるエストロゲンは、女性の体調と大きな関係がある。エストロゲンが欠乏すると、子宮や卵巣だけでなく、腎臓や骨、滑膜などに症状、疾患が現れる。45~60歳頃の閉経期・更年期にはエストロゲンが急激に低下し、けんしょう炎を起こしたり、関節周囲の滑膜が腫れて指が太くなったりする。

 「女性の健康とメノポーズ協会」(公益社団法人)」は1998年から女性の健康電話相談を始めた。三羽良枝理事長によると、これまでの相談件数は5万5000件を超えている。2023年10月~24年8月の986件の相談をまとめると、メノポハンドが27・3%で、「のぼせ、ほてり、ホットフラッシュ」の26・0%を上回った。

 ◇医師側の冷たい反応

 電話相談からメノポハンドに関する声を紹介する。

 「指のこわばりと足の関節の痛みで病院に行ったが、『特に何か病気ではないので治療は必要ない』と言われた」(45歳)

 「『手指の痛みがそんなに気になるなら、精神科へ行っては』と言われ、傷ついた」(50歳)

 「指が曲がってきて関節がびりびり痛い。『年を取ると変形はもっと進むよ』と内科医に言われた。仕事が続けられないのでは、と不安で眠れない日も」(57歳)

 「4、5年前から指の第一関節に痛みや腫れがある。内科医からは『年を取れば起きるので、しようがない』と言われ、取り合ってもらえなかった」(62歳)

 患者の悩みや理解されない苦しさが伝わってくる。三羽理事長は「電話口で泣きだす女性もいる」と話す。

更年期以降はメノポハンドに注意=提供:四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター

更年期以降はメノポハンドに注意=提供:四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター

 ◇使い過ぎ・加齢が原因ではない

 手指が腫れたり、変形したりした女性たちが受診しても、「使い過ぎです」「年のせいです」「治りませんね」といった医師の対応が多いという。平瀬センター長は「本当だろうか?」と疑問を呈する。

 「使い過ぎとするなら、利き手ではない手に症状が出るのはなぜか? 同じ職場の人は全員そうなっているのか? また、加齢のせいだとするなら、80歳以上は全員の手が変形しているのか?」

 メノポハンドは不定愁訴の一つだ。レントゲン画像で変形があれば病名が付くが、変形がないと病名が付けられない。病気の予兆かもしれないのだが、病名が付けられない人たちへの対応は素っ気ないようだ。

 ◇エクオールが症状軽減

 更年期症状のリスクを低下させるためにはどうするか。エストロゲンと似たような働きをするエクオールが注目されている。エクオールは大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によってエクオール成分に変わる。平瀬センター長によれば、「手指の不調を抱えている人はエクオール値が低い。これを産生する腸内細菌を多く持っている人は、更年期症状が軽くて済む」と言う。

 エクオール成分を含むサプリメントが開発され、数種類が発売されている。サプリメントを選ぶポイントについて、三羽理事長は「材料、成分と含有量、製法、問い合わせ先などが明記されているかどうかだ。安全性と有効性の検証も大事で、研究論文が出ているものが良い」と指摘する。(鈴木豊)

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