Dr.純子のメディカルサロン
ストーマって何? おなかにある“もうひとつの出口”
~オストメイトの声から生まれたやさしい装具~ 医療が届かない「その先」を支える

パウチを保護するパット。チューリップ型とタマゴ型。右は予定カラー見本5色
◇「かわいくて、かゆくない!」
中島 そこで、いつも装具を購入している販売店さんで「これが地味にかゆいんです」と相談してみたところ、そこの社長さんがミムロの落合社長を紹介してくださいました。
海原 そうなんですね。そのかゆい部分をどんなふうに解決したんですか? 見せていただけますか?
中島 これです。飛び出た部分をくるっと囲むようになっています。
海原 かわいいですね。色も形も。
中島 まだ名前はこれからなんですけど、形から今は「チューリップちゃん」「たまごちゃん」なんていっています。色もこれは淡いグリーンですが、5色あるんですよ。
◇衣料パーツの問屋が、なぜ医療装具を?
海原 色やデザインというのは気分と関わりますよね。器具が皮膚に当たってかゆみや痛みがあるのは命には関わらないけど、日常生活の質が低下します。そんな時そうした悩みを取り除き、色やデザインで気持ちを明るくするのは、とても大事なことだと思います。医療では手が届かない部分の大事なメンタルサポートだと思います。それにしても、ミムロさんはもともとボタンやファスナーなど、衣服に使うパーツの問屋さんだと伺いました。それが医療の分野の部品の開発をしようと思われたのはなぜなのでしょう。何かきっかけがあるのでしょうか?
落合 実は祖父と父が当時特許を取った紳士用ベルトを開発していました。「キーリットベルト」というものです。祖父や父は洋服に使うボタンやテープなどの問屋をしていましたが、ベルト作りや物を作るのが好きで発明家のようなことをしていたんです。そして、父(現ミムロ会長)がオストメイトの友人から相談を受けてベルトを1本作って差し上げたのが始まりです。その方は、自分のストーマベルトがすぐ壊れてしまうと困っていらっしゃいました。
父が作ったベルトを締めて友人が病院に行くと、そのベルトを見た看護師さんが気に入ってくれてその病院から1本、2本とご紹介をいただき、ベルト作りが始まりました。その当時は私もアパレル向けのパーツを売ることに忙しく、父が時間の合間でご対応させていただいているような感じでした。
医療用の製品作りがミムロの本業になるとは当時は想像できませんでしたが、困り事をお聞きすると弊社で解決できそうなことは、とりあえずチャレンジして試作してみるということを続けてきました。そのことが今につながっているのかもしれません。
海原 そうなんですね。オーダーメードの注文もあると聞きましたが、どんな製品でオーダーメードが行われるのですか?
落合 ご相談が多いのはストーマ傍(ぼう)ヘルニアや腹壁瘢痕(はんこん)ヘルニアでお悩みの方のためのベルトです。主に病院のWOC(皮膚・排泄ケア)、オストメイトや訪問看護ステーションの看護師、装具の販売店からご連絡をいただくことが多いです。
弊社の既製品のストーマベルトでどうしてもカバーできない場合、オーダーメードでの対応となり、その方の腹部の状況をお聞きして1本1本社内で縫製します。
中にはダブルストーマといって人工肛門と人工ぼうこうの方もいらっしゃいます。また、その方にぴったりのものを作るには実際に採寸することが大事ですが、遠方の方でどうしてもいらっしゃれない方にはオンラインで対応したりしています。
一番うれしいのはオーダーメードのベルトがその方のお体に合い、喜んでもらえたとき、お受けして良かったと思います。その日の晩のビールの味は格別です。
(2025/05/07 05:00)