話題

被災地の病院は医療機能の自己評価を
DMAT「司令塔」の提案【南海トラフ災害医療・上】


◇病院避難からICU拡充まで

 被災地の病院の診療継続には困難が伴う。東日本大震災では、地震による建物被害や津波に加えて、東京電力福島第1原発事故の影響で、入院患者らの避難を余儀なくされる例が相次いだ。

 阿南氏の提案は、被災後の病院機能の評価を踏まえ、こうした「病院避難」で診療をすべて停止するケースから、ICU機能を拡充するケースまで、病院の取るべき行動の選択肢を六つの類型に分けるという指針作りだ。

 医療機能の評価では、まず、病院の残存機能を何らかの機能喪失がある「Ⅰ(赤)」と「Ⅱ(黄)」、ほぼ通常の機能を維持した「Ⅲ(緑)」の三つの群に分ける。評価するのは医療面と生活面だ。

 医療面では、災害発生直後と3日後、1週間後に関して評価する。酸素が供給可能かどうか、臨床検査やコンピューター断層撮影(CT)、X線の検査ができるか、入院患者に薬の投与が続けられるか、外来患者に薬の処方を続けられるか、ICUの使用や手術のため電気や水を確保できるか、といった点がポイントだ。生活面では長期戦もにらみ、燃料や食料、飲み水の確保、入浴やトイレの問題などが評価の目安になる。

赤の場合は外来機能を維持できるか、黄色の場合は一般病床機能を維持・拡充できるのか、緑の場合はICU機能の維持・拡充までできるのかで、さらに二分する考えだ。阿南氏は「今抱えている患者については責任を持って何とか対応する、とか、受け入れを拡充して頑張ります、といった行動の分類を、各病院が表明してほしい」と話す。

災害医療の現場では、医師や救急隊員らが救命優先順位の高い方から「赤」「黄」「緑」「黒」(黒は呼吸停止)の順に患者を区分する。「トリアージ」と呼ばれる判定だ。阿南氏は、病院の行動分類の評価について「このトリアージの考え方に近い」と話す。


念頭にあるのは、各病院の自己評価を「広域災害救急医療情報システム(EMIS=イーミス)」に反映させることだ。DMATと同じく阪神大震災後に整備されたEMISは、病院や避難所などの状況を把握し、医療支援を的確に行うため、関係機関や医療チームが広く情報を共有する仕組み。「DMAT側もこの病院は赤だから速く助けに行く、黄色だから赤の次に、といった具合に考えられる。そのように支援を行う側、受ける側をマッチングさせるシステムが必要だと思う」

東日本大震災の津波で破壊された公立志津川病院=2011年3月、宮城県南三陸町
 DMATが活動する急性期が過ぎても、被災地では「防ぎ得る災害死を最大限防ぐ」ための長期戦が続く。日本医師会災害医療チーム(JMAT)など数々の支援チームが被災地に入り、被災者の医療や健康管理を支えることが期待されるが、被災病院側にも、診療継続のための「備え」の充実という厳しい課題が突きつけられている。(水口郁雄)

→〔「南海トラフ災害医療・下」へ進む〕

新着トピックス