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被災地の病院は医療機能の自己評価を
DMAT「司令塔」の提案【南海トラフ災害医療・上】

 ◇とことん生き延び、診療続けて

 阿南氏は、厚生労働省研究班の課題として、災害で被災した病院の適正な医療機能の評価と、それに応じた具体的な行動指針の提示という研究に取り組んだ。その前提になったのが、南海トラフ地震の医療需要の想定と支援力を比べる検討だ。

 大きな被害が予想される「絶対的被災地域」、支援する側に回る「非被災地域」、その中間エリアの「相対的被災地域」の三つに全国を分けると、静岡県から宮崎県までの太平洋岸を中心とする絶対的被災地域には、災害拠点病院が142ある。各病院に向かうDMATがそれぞれ最低1チームは必要だ。それに加えて、地域防災計画で航空搬送拠点と位置付けられる臨時医療施設(SCU)が20施設あり、それぞれに各20チーム、計400チームが必要になる計算だという。

 「これに対して、確実にすぐに支援に行けるのは北海道と東北、日本海側の非被災地域のDMATで433チーム。明らかに支援力は足りない」

 そもそも、DMATが絶対的被災地域のどのエリアにも入れる保証はない。現地入りしても移動が困難という事態もあり得る。集団災害医学会のシンポジウムでは、和歌山県の関係者が「県面積の8割は山地で、道路や鉄道も沿岸部に集中し、普段の高潮・高波でも交通がまひする。唯一の空港も沿岸部」などと話し、県南地域が孤立することへの危機感を訴えた。

 国は、ヘリが発着できる自衛隊の護衛艦を投入するなど海路も活用する構えだが、重傷者の搬送はやはり容易ではない。「発生から3日間で、自衛隊機とドクターヘリの搬送力で運べる人数は最大で1443人。新たに発生する重傷患者9300人の搬送が必要だとの報告があるにもかかわらず、だ。非被災地域のICUで受け入れ可能な収容能力も300床から450床程度しかない」と阿南氏は言う。

南海トラフ地震を想定した防災訓練。負傷者が搬送される護衛艦「いせ」の格納庫とDMAT隊員ら=2014年10月、和歌山県潮岬沖
 DMATの戦略的には、「最も被災している所を最優先にして、チームを集中投入する」という考えもあり得る。阿南氏は検討結果を踏まえつつ、「きつい言い方をすると、3日たっても4日たってもDMATが行かない所もあるかもしれない。とことん生き延び、診療を継続する方法を平時から考えてほしい」と強調する。

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