医学生こーたのひよっ子クリニック
第14回 医学部受験における「選択」の大切さ
知っておきたい医局、地域枠ルール
「どこの医学部でも医者になってしまえば一緒」。医学部受験生なら一度は耳にするこの言葉。医学部受験生だった時の私も「多少の違いはあれど、入る大学や入り方によって何かが大きく変わることはないだろう」と思っていた。しかし、これは医学部最終学年になった今なら、はっきり違うと断言できる。医学部を目指す受験生そしてその親御さんへ向けて、二つの裏話から医学部受験における「選択の大切さ」を伝えたい。
他大学出身の医師も働いてはいるが、病院長や教授などの役職にはその大学出身者が就いていることが多い。医師としての実力ももちろん大切ではあるが、出身大学という要素も出世をしていくためにはとても大事になってくる。
そしてもう一つ。日本の医学部は卒業後に診療科を選べる制度となっているが、一部例外がある。それが地域枠受験だ。
この受験方式で入学した人は、返済不要の奨学金がもらえる代わりに、卒業後数年間は決められた場所で、へき地医療に従事する決まりとなっている。一般入試と別枠で受験が行われることが多いため、「数年のへき地医療従事で、医学部に入るチャンスが増えるなら、この方式も受験しておこう」と、喜んで受験する生徒が多い。
しかし、この地域枠受験には「将来限定された診療科に基本的には進む」という暗黙のルールがある。大学や地域によって、医師が不足している小児科医や産婦人科医などに導かれたり、内科医を強く推奨されたりする。「将来は内科医としてバリバリへき地医療をしよう」と決めている受験生が暗黙ルールを知った上で内科医を求める大学を受験するのなら良い。そこまでを高校生に求めるのは酷ではないかと感じるが、このルールの実情は知っておいて欲しい。
このように、どこの大学にどのように入ったかで、医師としてのキャリアは少なからず変わる。自分の学力や家庭の経済力と相談しながらも、「選択肢を受験の段階で狭めて良いのか」「この大学で本当に自分のなりたい医師になれるのか」を十分に考えてほしい。そして、受験校および方式選択という人生の岐路を納得のいくものにしてもらいたい。
【用語説明】
へき地…交通条件および自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち、医療の確保が困難である地域のこと
(2018/10/19 06:00)