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気にするほど眠れなくなる
間違っている睡眠の常識

 寝付きが悪い。眠ろうとしてもなかなか眠れない。自分は不眠症ではないのか。こんな悩みを抱えている人は多いだろう。しかし、そのすべてが本当に病気なのだろうか。長年、患者の睡眠の問題に携わってきた久留米大学副学長で神経精神医学講座主任教授の内村直尚氏は「無理に眠ろう、眠ろうとすると、交感神経を刺激し興奮してしまい、かえって眠ることができなくなる。あまり気にしないようにすることが大事だ」と、考え方の転換を説く。内村教授に正しい睡眠に関するポイントを聞いた。

眠ろうとすると、かえって眠れない

眠ろうとすると、かえって眠れない


 ◇就寝時刻は分からない

 昨晩は午後11時まで眠れなかった。眠れたのはようやく午前1時を回ってからだ―。こう訴える患者は多いようだが、内村教授は「実態はそうではない」と言う。なぜか。

 「寝た時刻を正しく分かる人はいない。いつの間にか眠ってしまうから。一方で、朝起きた時刻は時計を見れば、分かる。だから、睡眠の質を正しく評価することもできない。本当はそう気にすることはない」と内村教授は話し、「見えないものを見ようとする。姿が見えないものを見ようとする。そうすると、『底なし沼』に陥ることになる」と続ける。「3年間、一睡もできていません」。こう訴えた患者の夜間の睡眠脳波を検査すると、実は4~5時間は眠っていることが少なくないという。

 ◇眠る前には難しい本を

 睡眠の質に対する評価は自分では分からない。「ポイントは朝の目覚めと昼、特に午前中の眠気だ」と内村教授は言う。午前中に大事な仕事があるのに、眠気を我慢することができない。仕事ではなくても、興味がある趣味ができない。好きなビデオを見ていても、本を読んでいても眠くなり、ソファで横になってしまう。こうした場合は、専門医に診てもらった方がよいだろう。もっとも、会社での会議中に眠くなるのはよくあること。「中身にもよるが、つまらない会議中に眠るのは、まあ普通だと思う」と笑いながら話す。

 眠ることにこだわらない。そのためにはどうするか。いやし系のクラシック音楽やラジオを聴いたり、本を読んだりする。これが「眠らなければならないというこだわりから気をそらす効果がある」と話す。ただ、本の場合は面白いものは駄目だ。例えば、面白いミステリー小説だと結末を知りたくなるので夜更かしをしてしまうから。内村教授は「哲学書や科学書のような難しい本か、つまらない本がお勧めだ」と、ユーモアを交えて語った。

 ◇夢は眠った証し

 「夢を見るのは眠りが浅いからだ」と誤解する人たちもいる。それは少し違う。夢を見ることは唯一、睡眠を自覚することができる証拠だ。「睡眠は普通、90分周期で構成されている。一晩に3~4回くらい夢を見るのが一般的だ。夢を見ることはつまり、眠れていることだ」。ちなみに、質の良い睡眠時間は午後10時から午前4時までの間とされる。ただ、夢は午前0時から午前中にかけて見やすい。内村教授は「午前2時か3時ごろに寝て、10時ごろに起きる人はよく夢を見るだろう」と話す。

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