成長に深刻な影響も
子どもの睡眠時無呼吸症
睡眠中に呼吸が何度も止まる閉塞(へいそく)性睡眠時無呼吸症(OSA)。子どもがOSAになると、成長障害を引き起こすなど、大人よりも幅広い影響があることが分かってきた。太田総合病院太田睡眠科学センターの千葉伸太郎所長に、発症の原因や症状、治療法などを聞いた。
子どもも発症する閉塞性睡眠時無呼吸症
▽脳が何度も覚醒
子どものOSAの多くは、就学前から小学校中学年くらいに発症し、睡眠中の苦しそうな寝息やいびきを伴う。千葉所長は「睡眠中に呼吸が完全に止まるわけではなく、呼吸がしにくい中で懸命に息をしている状態、つまり低呼吸が続くのが特徴です」と説明する。
睡眠中に脳や身体が酸素不足になる低呼吸が何度も続くと、脳は断続的に覚醒を繰り返す。その結果、睡眠は断片的で質の低いものになる。すると、睡眠が深くなったときに分泌される成長ホルモンの分泌量が少なくなるため、重症のOSAでは子どもの成長に深刻な影響を及ぼすことがある。
落ち着きがない、イライラしがち、勉強に集中できない、といった状態になり、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と誤診されることもある。また、低身長、低体重、食欲不振、夜尿症、肋骨(ろっこつ)や胸骨が変形する漏斗(ろうと)胸などの症状が表れることも。夜間のせきなど、ぜんそくに似た症状を示す例も見られるという。
▽口呼吸の習慣を治す
原因は喉の奥の両側にあるへんとうや鼻の奥にあるリンパ組織アデノイドの極端な肥大などが多い。さらにはアレルギー性鼻炎による鼻詰まりなどで口呼吸の習慣化が問題となる。口をポカンと開けて呼吸するくせがあると、下顎の骨格が成長しにくくなる。その結果、小顔になって、睡眠時に舌の根元が落ち込み、気道をふさいでしまう。
「周囲の大人は、子どもが口を開けっぱなしにしていたら注意を促すなどして、鼻呼吸の習慣を身に付けさせてほしい」と、千葉所長は言う。睡眠時に口を閉じるために用いるテープなども市販されており、肌が丈夫な子どもなら使用も可能だが、根本的にへんとうやアデノイドの肥大、アレルギー性鼻炎などが原因であれば医療機関での治療が第一となる。
千葉所長は「いびきや寝苦しそうな寝息のほかに、発達の遅れや注意力散漫などが見られたらOSAのサインです。大人が気付いてあげて、早めに専門外来を受診することが大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/31 06:00)