一流に学ぶ 難手術に挑む「匠の手」―上山博康氏

(第3回)駆け落ちから結婚へ=初恋破れ、その後運命の出会い

 勉強も運動もトップで負け知らずだった上山氏は、20歳の時に大失恋を経験した。「医学部2年目の冬から翌年のゴールデンウイークまでの半年間、大学にもスキー部の練習にも行かず、毎日酒を飲んで寝たきり状態になっていました」

 高校1年の頃からあこがれ続けた初恋の人だった。しかし、容姿にコンプレックスがあった自称「ノートルダムの背虫男」の上山氏は、思いを伝えることもなく、友達に頼んで遠くから撮影してもらった写真を財布に入れて持っているだけだった。「僕なんかが愛されるわけがない。遠くから一生見てるだけだと思っていました」

 ところが大学のスキー部の練習帰りに、旭川の駅前で、高校卒業後に就職していた彼女に偶然再会。そこへ同じ高校の同窓生もたまたま現れ、3人で飲みに行ったことから交際が始まった。「毎週、札幌と旭川を行ったり来たり、しばらく付き合っていたけれど、彼女から婚約してほしいという話が出て、僕はノーと言いました」

 まだ親のすねかじりの状態なのに、婚約など考えられなかったし、「何よりもこんな美人が自分なんかを好きになるわけはない! 将来、医者になるという肩書だけで自分が相手してもらっている」と疑心暗鬼だった。

 「結婚というのはその頃の自分にとって一番タブーの言葉なんですよ。やっぱり結婚だけが目的なのか、恋愛対象じゃないんだと思ってしまって…」。幼い頃から愛される実感を持たずに育ってきた上山氏の心はかたくなだった。けんか別れになった後、彼女から何度か手紙が送られてきたが、読まずに破り捨てた。

 「後になって、勤務先で薦められた見合い話を断るため、僕と早く婚約したかったのだと分かりました。でも、もう後戻りはできませんでした」

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