一流に学ぶ 難手術に挑む「匠の手」―上山博康氏
(第18回)敵は病気、犠牲は覚悟=新たな手術への信念
◇命懸けの医師育てたい
「ずっと批判される側に居続けろ」は、恩師の伊藤善太郎氏(故人)の言葉だ。
上山氏は「批判され続けるには、常に仕事をしていなければいけない。同業者の中には僕を嫌っている人はたくさんいると思います。でも、僕の闘う相手は人ではなく病気そのもの。人の命をうばう悪魔みたいな病気と闘うためには、手段は選ばない。患者のために命懸けで闘う脳外科医を育てていかなければならない」と話す。
挑戦し続けるのは、前人未到の手術。誰もやったことのない治療をすれば必ずたたかれる。EBM(根拠に基づく医療)が主流になり、過去の臨床結果や論文などをもとに治療結果を比較し、治療方針を決めることが求められる現在の医療においては、なおさらだ。
「でも、世界初のことをやらなければ患者が死ぬんです。種痘法を開発したエドワード・ジェンナーは8歳の少年に牛痘を接種しましたし、世界初の全身麻酔手術を行った華岡青洲は実母と妻を実験台にして、実母は亡くなり、妻は失明という大きな犠牲を払っています。今なら医師法違反で逮捕されるでしょうけど、信念を持ってやっている。僕もそれぐらいの気持ちでやっています」(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2018/01/11 10:00)