女性アスリート健康支援委員会 「食」の要注意サイン、ありませんか

「糖質抜き」はダメ、イメージに振り回されないで
栄養学の専門家が明かすスポーツ女子の心配な食行動

 ◇「だけ食べ」は避け、無月経を予防して

 アスリートは栄養管理が大切。国立スポーツ科学センターの栄養評価システムはタブレットに食事の分析結果が表示される=2018年4月、東京都北区
 小清水先生によると、「太るのは嫌」という心理状態が高じて、とにかく軽いものを食べようとする行動も、見受けられるそうです。同じ重量でも脂質の多い食品の方がエネルギーは高くなるので、食品の重量とエネルギーは比例しません。

 例えば、コンビニのおにぎり1個(約100グラム)とポテトチップス1袋(約60グラム)では、脂質の多いポテトチップスの方が、エネルギーが高くなります。それなのに、おにぎりより重量の軽いポテトの方を選んでしまう人はいませんか?

  「きょう1日、リンゴ1個しか食べない」といった女性アスリートもいます。「野菜しか食べない」「豆腐だけ食べる」「ヨーグルトだけ食べる」といった人も珍しくないそうです。

 残念ながら、こうした栄養素バランスが悪いエネルギー不足の食事で、体の「利用可能エネルギー」が不足してしまうスポーツ選手が珍しくありません。練習量に見合った食事をとらずにエネルギー不足が続くと、貧血無月経のリスクになります。

 「無月経が長期間続くと、女性ホルモンのエストロゲンが低下し、骨量の低下を引き起こします。低骨量の状態で運動すると、骨にストレスが繰り返しかかり、疲労骨折するリスクが高くなります。特に思春期の無月経(初めての月経の遅れを含む)は、骨の形成に大きく影響し、疲労骨折する確率が高くなります」と小清水先生は心配します。

 ◇厳しい練習の時こそ、よく食べる工夫を

 エネルギー不足にならないためには、無理な減量はもちろん禁物。極端な小食になったときは、心の健康もむしばみかねません。

 「試合で勝つためにも体重を落とさないと」と思うあまり、食べることに罪悪感を持つようになったり、その反動で「むちゃ食い」したりするようになる場合もあります。「そうならないためにも、早めに極端な食事制限から抜け出すことが大切」と小清水先生は話します。

 日本産科婦人科学会や日本スポーツ協会などでつくる「女性アスリート健康支援委員会」のシンポジウムで講演する小清水孝子先生=2018年12月、東京都文京区
 減量するつもりはなくても、練習時間が長くなったり、練習強度が強くなったりするときは、体がエネルギー不足になりがち。「運動は皆さんが思っているより、エネルギー消費量が多いもの。1日当たり2500キロカロリーくらい食べたら、運動習慣のない女性は十分過ぎるくらいだけれど、運動量が多くて3500キロカロリーくらい摂取が必要な選手は珍しくありません」

 だから、部活で厳しい練習をしたら、その分、食事からのエネルギー摂取量を増やさなくてはなりません。特に炭水化物を運動量に見合った分とることは重要です。

 小清水先生は「練習後の食事で食欲が落ちたときには、練習後に、飲むヨーグルトやフルーツヨーグルトなど、糖質とたんぱく質がとれる、のどを通りやすい補食をとっておきます。その後、シャワーを浴びるなどして少し落ち着いて副交感神経を優位にしてから食事をするのも一つの方法です」とアドバイスしています。

 アスリートの食事については、国立スポーツ科学センターのホームページの「スポーツ栄養」のコーナーや、東大医学部産婦人科学教室発行のアスリートのためのハンドブック「Health Management for Female Athletes Ver.3」が参考になります。(水口郁雄)

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