女性アスリート健康支援委員会 「食」の要注意サイン、ありませんか

思春期の摂食障害、背景に「伸び悩み」のケースも
スポーツ女子の「落とし穴」と「気づき」のサインは

   極端にやせる「拒食症」や過食をコントロールできなくなる「過食症」といった摂食障害は、思春期のスポーツ女子に目立つ病気の一つです。心身の健康を取り戻し、スポーツや勉強などに打ち込むためには、摂食障害だと早く気づいて、早く治療を始めることが何より大切です。

 ところが、「摂食障害になっても、病状を認めなかったり、治療の必要性がないと言ったりする人が多い」と、精神科医で明治学院大教授の西園マーハ文先生は言います。早期治療や予防につなげるために、よくある発症のきっかけと、病気の特徴やサインを聞きました。

 新体操をやっていた思春期に摂食障害にかかった体験を話す20代の女性
 スポーツ女子の場合、行き過ぎた減量やオーバートレーニングから低体重になるのが、摂食障害の典型的なきっかけです。陸上長距離のように持久力を競う競技や、演技の美しさを採点する体操・新体操、フィギュアスケートといった競技、柔道などのような体重階級制の競技の選手に目立ちます。

 ただし、ほかの競技の選手でも、摂食障害は決して珍しくありません。過度の減量や練習は、部活などの指導者の指示で行われることがある一方で、本人の意思で行われることも多く、その背景には、思春期のスポーツ選手に共通する心の悩みがあることも、少なくないようです。

 「よくあるのは、小学生からずっとスポーツをやっていて『上手だ』などと言われていたのに、高校生くらいになって伸び悩み、過度の練習で補おうとして、摂食障害になるケースです」

 スポーツ推薦などで進学してスポーツを頑張っていたのに、「このままスポーツを続けていいのか」という、根本的な進路の悩みを抱えているケースも見られるそうです。

 ◇周囲から孤立、こっそり朝練の選手も

 摂食障害になった人は「やせたい」「太るのが怖い」といった感情にとどまらない、心理的な問題を抱えていると、西園マーハ先生は言います。

 「例えば、拒食症の人は、100グラムでも体重が増えたら死ぬしかない、といった極端な考えにとらわれていることがあります」。そんなふうに「完全」を求める傾向に加え、怒りや寂しさといった自分が抱える感情への「気づきにくさ」も、この病気の特徴です。

 拒食症では、やせ始めは「やればできる」という高揚感を持ってしまうことが多く、運動しすぎをやめられなくなる傾向があります。その一方で、自分だけのルールで食事や運動をしているうちに周囲から孤立してしまうことも多いといいます。

 「コーチに言われた練習以外に、低体重なのにもかかわらず長時間、一人で朝練をする人なども珍しくありません」と西園マーハ先生。摂食障害では、本人が体調の変化を感じにくく、病気だという認識に乏しいのは、症状の一つといえます。摂食障害だと気づくためには、摂食障害について、本人も、スポーツ指導者や家族も、よく知っておくことが大事です。

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