こちら診察室 皮膚のトラブル

赤ら顔になる「酒さ」
~中年以降の女性に多く~ 【第6回】

 顔の赤みで悩んでいる方は多いと思います。その症状は、もしかすると「酒さ(しゅさ)」と呼ばれる皮膚の病気かもしれません。「赤ら顔」とも呼ばれ、顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患です。中年以降に発症しやすく、男性よりも女性に多い傾向があります。顔面に症状が表れるため、日常生活に支障を来すこともあります。

顔が赤く、ニキビのような症状が見られる

顔が赤く、ニキビのような症状が見られる

 ◇皮膚がニキビ状に、火照りも

 顔の中でも鼻や頬、額などに赤みやニキビのような症状が出る病気です。ただ、ニキビとは異なり、毛穴の入り口が角化したり、毛穴が詰まったりしません。皮膚の症状に加えて、火照りやヒリヒリ感などが見られるのも特徴です。

 酒さは症状によって①紅斑毛細血管拡張型②丘疹膿疱(きゅうしんのうほう)型③鼻瘤(びりゅう)④眼型―の4タイプに分類されます。患者さんによっては、これらの病型が複数混在する場合があります。

 症状は次のように進行するのが典型的とされます。

 ・ステージ1: 疾病の初期で、顔が繰り返し赤くなったり、火照ったりする。

 ・ステージ2: 顔の皮膚表面の毛細血管が拡張し、常に赤みが差している。

 ・ステージ3: 赤みや火照りに加え、赤い盛り上がりやうみのたまったニキビのようなぶつぶつが見られる。

 ・ステージ4: 鼻が赤く膨らみ、鼻瘤が形成される。

 酒さの原因は明らかになっていませんが、臨床病態の観察から複数の増悪因子の関与が指摘されています。具体的には、紫外線や高・低気温などの外部環境、精神的ストレスや食べ物などに起因する心身の状態など、いろいろな要因が重なって発症すると考えられています。患者さんによってさまざまです。

 ◇刺激避けて洗顔・保湿

 治療法は①悪化因子の除去 ②スキンケア ③医学的治療―の三つです。   

 まずは、ご自身の酒さが悪化する原因を特定・回避することが大切です。暑さや寒さ、アルコールや香辛料といった刺激の強い食べ物、医薬品、化粧品など、生活の中で原因となっているものを見つけ、それらをできるだけ避ける生活を心掛けましょう。原因となるものが分かっている場合、特に悪化させたくない時期には徹底的に避けるようにしましょう。

 スキンケアはどの病型に対しても実施します。適切な遮光を行うとともに、低刺激性の洗顔料や保湿剤を使用しましょう。また、メークで赤みを目立たなくすることはQOL(生活の質)の向上につながります。化粧品は肌への刺激が少ないものを選択しましょう。

 スキンケアのポイントをまとめてみます。

 〔クレンジング〕
 ・摩擦を避けるために拭き取り用ではなく、洗い流し用を使用する。
 ・たっぷりの量を用いて短時間でメークをなじませ、乳化させて除去する。

 〔洗顔〕
 ・たっぷりの泡で優しく手のひらで洗う。

 〔保湿〕
 ・刺激を感じない高い効果の保湿剤を使う。
 ・塗布するときはたっぷりと手に取り、押さえるようになじませる。
 ・刺激がなければ抗炎症作用のある成分が含まれる保湿剤もよい。

 〔遮光〕
 ・紫外線は酒さの悪化因子。一年を通して日焼け止めなどを使用する。
 ・せっけんなどで容易に落とせるものが望ましい。
 ・散歩や買い物、通勤などの外出なら防止効果がSPF20~30程度、PA2+前後、炎天下でのレジャーやスキー場などではSPF40~50+、PA3+~4+を選ぶ。

 ◇根気よく治療

 医学的な治療方法は、顔の赤みやぶつぶつ、毛細血管の広がりを改善するために行います。薬物療法のほか、毛細血管拡張にはレーザー治療・光治療(自費治療)を行うこともあります。

 2022年に0.75%メトロニダゾール外用薬(ロゼックスゲル)が治療薬として保険の適用対象になりました。皮膚の炎症を抑え、赤みやニキビのようなぶつぶつを改善する効果が見込めます。赤みは緩やかに改善し、症状が落ち着くまでには時間がかかります。

 赤い盛り上がり、うみを持ったぶつぶつは比較的早く改善が見られます。一般的には数カ月です。何らかの悪化因子により症状が一時的にぶり返すケースもありますが、治療を続ければ悪化の程度を抑えることが期待できます。(了)

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木村有太子(きむら・うたこ)
 医学博士、順天堂大学医学部皮膚科学講座講師(非常勤)。
 2003年獨協医科大卒。同年順天堂大医学部附属順天堂医院内科臨床研修医、07年同大浦安病院皮膚科助手、13年同准教授、16年独ミュンスター大病院皮膚科留学。21年より現職。
 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本美容皮膚科学会理事、日本医真菌学会評議員、日本レーザー医学会評議員。


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