ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界

特別視は不要
~偏見・理解不足から差別も~ 【第2回】

 ◇苦手克服より強み伸ばす

 これといって引きずることもなく大人になり、麻布や六本木のバーで勤め、その間もずっとイラストを描き続けていました。筆者略歴の通り、その後はメガネ屋、眼科、またメガネ屋。目の仕事をすれば、当然ながら色覚特性を持つ人と接する機会も多く、さまざまなお話を聞きました。高齢の人ほど周囲の理解と配慮が足りず、色盲への偏見からいじめ、差別などを受けたようでした。2003年から最近まで義務教育時の色覚検査をやめていましたが、検査を受けた経験のない世代が就職する年齢となり、初めて色覚特性が判明し、希望の進路へ進めなかったという人もいました。

 確かに、色覚特性を持つ人だと就くのが難しい職業は少なくありません。人の命に関わるところでは、患者の血色、薬の色、血液の色などをしっかり見極める必要がある医者。信号や計器の色を見分けなくてはならない運転手やパイロット、自衛隊員もそうです。内容にもよりますが、デザイン関係の仕事も難しい場合が多いと思います。

 色覚で困っているというお客さんに対し、私はよく言います。「色覚が原因で死ぬことはありません。付き合い方を変えませんか」。運動も、歌も、楽器も、絵画も苦手な部分を平均的な水準に引き上げるより、得意なところを伸ばした方が建設的です。

 差別を受けたという被害者の会のようなものも存在します。ただ、被害のほとんどは色覚特性そのものではなく、一般の人の理解の低さと配慮の無さが原因です。当事者が変わること以上に周囲の認識・理解が重要です。この記事が少しでも手助けになればいいと思います。

 次回は「色覚特性の私が眼鏡士をやっていた意味がここにあった!」という、泣ける(かもしれない)お話をさせてください。(了)

 長瀬 裕紀(ながせ・ゆうき) 1級眼鏡作製技能士。過去に量販眼鏡店に就職するも勉強不足を痛感。修行のため眼科コメディカルとして10年弱勤め、年間3500人以上の目のケアに携わる。認定眼鏡士SS級のプロとして現在は吉祥寺の眼鏡店(グラストリーイカラ https://www.g-ikara.jp/)で勤務し、2022年度から始まった国家資格「眼鏡作製技能士」の試験に合格した。自身の体験談を踏まえた色覚特性のブログが人気を博し、数多くの問い合わせや相談が寄せられている。

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