ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界

特別視は不要
~偏見・理解不足から差別も~ 【第2回】

 前回お話しした通り、苦手意識はネガティブな思考を肥大させるのであまり良くありません。色覚特性という聞き慣れない単語を使うから特別感が出てしまうのです。「男性の20人に1人はそう。珍しくない」という感じで捉えていただくと、過剰な自意識や劣等感などを持つ人はもっと減るのではないでしょうか。

 こんにちは、長瀬です。今回も時代背景により、今ではあまり見聞きしなくなった「色弱」「色盲」という単語をたまに使います。ご了承ください。では、きょうも色覚についてお話をしていきましょう。

 ◇遅かった自覚

 私も先天性色覚特性で、かれこれ40年以上の付き合いになります。検査しないと発見しにくいので、親も私もそんな特性を持っていると思わず、その存在を知りませんでした。私が初めて自覚したのは絵の具がきっかけです。絵を描く趣味がなければ自覚のタイミングはもっと遅かったかもしれません。

 ターニングポイントは小学3年生の時だったと思います。1981年生まれの私は、健康診断の必須項目だった「石原式色覚特性検査」を保健室で受けました。すると、私だけ時間がかかった上に、放課後の再検査まで言い渡されました。

  検査はこの石原式だけではありません。他にもさまざまな方法、機器があります。大まかに言うと、色覚特性を確定させる流れは①石原式などによって色覚特性の有無を調査②パネルD15という機器で色覚特性の傾向を判定③アノマロスコープで度合いを確認(Ⅰ型、Ⅱ型の場合)―となります。つまり、石原式は色覚特性があるかないかだけを見るもので、傾向も度合いも完全には分かりません。学校で行うのは、あくまで養護教諭が行える簡単な確認作業だけです。石原式検査が終わった後、私はまた普通の生活に戻りました。

  ◇親も気付きにくく

 色覚特性を伝えるか否かに正解はありませんが、両親は私に伝えなかったと記憶しています。理由は幾つかあります。

 まず一つは、一般の人々の色弱と色盲に対する認識が眼科領域の概念とは大きく違うことです。皆さんが色盲と聞いて想像するのはチャプリンの映画のような昔の古い、白黒映像の世界だと思いますが、そうではありません。あのような見え方は、正しくは「全色盲」と言います。第1回の記事にも書きましたが、私はⅡ型2色覚です。昔は色盲の分類でした。ただ、意外にカラフルに見えています。これも前回記事の写真の通りです。

 二つ目に、色の情報は知識で補えることが挙げられます。幼児向けの絵本では、リンゴとトマトは赤、木は緑、信号機は鮮やかな色調の赤・青・黄になっています。つまり、「リンゴは赤色」などと幼少期にしっかり刷り込んでおけば、ある程度「認識」できてしまうのです。

 三つ目の理由は不十分な検査。眼科で上記①~③を全て実施して詳細に調べるケースはほぼありません。ほとんどは最初の検査のみで、白黒に見えなければ「色弱です」で終わります。

 これら三つの理由と物の色をかなり的確に言い当てる様子を見て、両親は私を色弱だと思い込んでいました。「弱度だし、大丈夫だろう」という気持ちから、私には伝えなかったようです。自尊心が傷つかないよう気を使ってくれたのかもしれません。

 ただ、この件については後日談があります。確認のためにごく最近、親に電話したところ、小3の検査後にすぐに伝えられていたと判明。全く覚えがないのですが、親子3人で眼科に行き、説明を受けたらしいのです。私の単なる記憶違いでした。

 結局、自分が色覚特性であるときちんと理解したのは高校の時です。さらに、色弱ではなく色盲と分かったのはメガネ屋になってから。28歳で精密検査を受けるまでずっと思い違いをしていました。

 ちなみに、電話で母に「なぜ言わなかったの?」と聞いた時、返ってきた第一声は「詳しくは覚えちょらんよ(覚えていない)」と明るく朗らか。色弱ではなく色盲との精密検査の結果にも「あはは、そうけ(そうなの)!」でした。ポジティブな性格の8割は母親譲りです。

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