急性乳腺炎〔きゅうせいにゅうせんえん〕 家庭の医学

■うっ滞性乳腺炎
 乳管のどこかで閉塞が起こり、乳汁が排出されない状態です。乳管の乳頭への開口部は、1カ所ではなく数カ所にあるので、乳汁がまったく出ない状態になるということはなく、腫瘤(しゅりゅう)が形成され、痛みが出てくることで気づかれます。乳腺炎に分類されていますが、細菌感染による炎症とは異なります。
 きつい服装をせず、頻繁に授乳することで予防可能です。症状がある場合は、乳房をあたためてマッサージしながら授乳・搾乳をおこなうことにより改善が得られます。

■急性化膿性乳腺炎
 乳頭から侵入した細菌の感染により発症する炎症で、局所の発赤、熱感が出現し、全身的にも発熱とそれに伴う悪寒(おかん)・戦慄(せんりつ)、頭痛や倦怠(けんたい)感が出現します。また、乳腺実質内に膿(うみ)がたまった腫瘤(乳腺膿瘍〈のうよう〉)を形成することもあります。
 抗菌薬の内服により治療されますが、乳腺膿瘍を形成している場合には、皮膚に小切開を加え、膿を排出させることが必要になります。抗菌薬を内服している間も、健康な側の乳房からは授乳を続けるのが望ましく、乳腺炎の治りも早いのが一般的です。

(執筆・監修:医療法人財団順和会 山王病院 病院長/国際医療福祉大学大学院・医学部 教授 藤井 知行
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