縦隔の腫瘍〔じゅうかくのしゅよう〕

 縦隔にはいろいろな組織があるため、頻度は高くありませんが、さまざまな腫瘍が発生します。縦隔にある気管・気管支や食道の内腔は、比較的がんが発生しやすく、それぞれ気管支がん(肺がん)、食道がんといわれます。
 胸腺(きょうせん)や神経組織から腫瘍が発生することがありますが、それほど頻度は高くなく、また腫瘍が発生する原因の多くは不明です。多くの場合、症状もなく、健康診断で胸部X線写真上に異常な腫瘍陰影が映し出されて発見されることがほとんどです。このようなときには、精密検査として胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査をする必要があります。CT所見では縦隔から発生した腫瘍であることがわかります。
 悪性の縦隔腫瘍では、急速に腫瘍が成長し、腫瘍周囲の胸膜、心膜や大血管に浸潤(しんじゅん)する場合があり、胸部に鈍痛があります。また、腫瘍浸潤の結果として上大静脈が閉塞した場合には、頭部・上肢の血液の戻りがわるくなるため、顔や腕がむくんでくることがあります。これは上大静脈症候群という状態であり、急いで治療を始める必要があります。
 胸腺は胸骨の裏側、心膜・上行大動脈の前にはさまれた部位に存在する臓器で、頸(けい)部の甲状腺と同様に、チョウが羽をひろげたようなかたちをしています。胸腺は細胞性免疫に必要不可欠なT細胞というリンパ球の一種を成熟させる器官として重要なはたらきをしています。ただし、胎児期から新生児期に必要なT細胞がほぼできあがり、成人後は胸腺組織は萎縮してほとんどが脂肪組織に置き換わってしまいます。
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