奇形腫〔きけいしゅ〕 家庭の医学

 胸腺に発生する腫瘍として2番目に多いのが奇形腫です。奇形腫のほとんどは、成熟型奇形腫と呼ばれる良性腫瘍です。これは周囲が線維性のふくろでおおわれた腫瘍で、内容物は人体の各所の組織(皮膚・毛髪・軟骨・骨・膵〈すい〉組織などの各種外胚葉〈はいよう〉・中胚葉・内胚葉成分)が無秩序につまったものです。奇形腫は縦隔(じゅうかく)に発生するだけでなく、からだのいろいろな部分に発生することがあります。
 発生しやすい部位としては、胸腺(きょうせん)のほかには性腺(精巣・卵巣)・仙骨・脳の松果体(しょうかたい)など比較的からだの中心部です。
 良性の奇形腫のほとんどはまったく症状はなく、健康診断のときに胸部X線写真で異常な陰影がみられて気づかれることが多くあります。時に腫瘍が破れて、内容物が近隣の肺の中に出ることがあります。この場合、突然肺炎症状が起こり、また毛髪などの腫瘍内容物が喀(かく)たんとともに出てくることがあります。

 奇形腫は放置すると、このような合併症を起こす可能性があるため手術で摘出することがすすめられます。腫瘍が小さい場合には、胸腔(きょうくう)鏡手術をおこない、小さな皮膚切開で切除が可能です。また、最近は病院によってはロボット支援下に手術をおこなう場合もあります。

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