胸腺腫〔きょうせんしゅ〕 家庭の医学

 胸腺から発生する腫瘍のなかで、もっとも頻度が高いのは胸腺腫です。30歳を過ぎてから発生することが多く、健康診断で胸部X線写真に異常な陰影がみられて発見されることが多いのが特徴です。
 腫瘍が発生する部位は、本来胸腺が存在する部位、すなわち心臓・大血管と胸骨にはさまれた前方の縦隔です。胸腺腫にかかると、約3割に重症筋無力症が合併します。重症筋無力症を発症したあとに、胸部を検査して胸腺腫が発見されることもあります。
 胸腺腫の多くは被膜に包まれ、周囲の臓器への浸潤(しんじゅん)はありませんが、なかには周囲の肺や大血管に浸潤したり、リンパ節や遠くの臓器に転移をする悪性(浸潤型)胸腺腫もあります。また、無症状の胸腺腫でも放置すると重症筋無力症を併発することがあるので、本疾患が疑われた場合にはすぐに治療する必要があります。呼吸器外科の専門医にご相談ください。


[治療]
 外科手術で腫瘍を摘出して治療します。胸腺腫だけでなく、発生のもととなる胸腺と周囲の脂肪組織をあわせて切除する拡大胸腺全摘術をおこないます。胸腺は胸骨の裏側、心臓の前面に存在するため、胸腺腫の手術では心臓手術と同様に、前胸部から胸骨を縦に切開するアプローチ(胸骨正中切開術)が一般的におこなわれます。最近では胸腔鏡やロボット支援下手術によって、胸骨を切開せず胸部の小さい傷から手術をおこなう場合も多くなっています。良性の胸腺腫なら手術後再発することはほとんどありません。また、悪性(浸潤型)胸腺腫の場合でも完全切除できれば7割以上の確率で根治できます。浸潤型胸腺腫と診断された場合には、外科治療に加えて胸部に放射線照射をおこなったり、抗がん薬を使用することもあります。
 なお、成人であれば手術によって胸腺が無くなっても健康状態には変わりがありませんので、心配はありません。

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