胆嚢がん、胆管がん、十二指腸乳頭部がん〔たんのうがん、たんかんがん、じゅうにしちょうにゅうとうぶがん〕 家庭の医学

 胆道にできる胆道がんは、腫瘍がある部位によって胆嚢がん、胆管がん、十二指腸乳頭部がんなどに分類されます。早期には症状がないことが多く、消化器系のがんのなかでは、比較的複雑な治療が必要になるがんです。
 胆嚢がんの好発年齢は70歳代で、女性にやや多くみられます。早期には症状がないことが多く、進行すると胆汁の流出がさまたげられることで黄疸(おうだん)がみられます。胆嚢炎を併発することもあり、その際は右上腹部痛、発熱などがみられます。治療は、手術によりがんを摘出することが第一です。早期のがんでは胆嚢摘出術がおこなわれますが、周辺の臓器が複雑な構造であるため、進行例では肝臓や膵臓を合併切除するような大きな手術になります。
 胆管がん、十二指腸乳頭部がんは、好発年齢が60歳代で、胆管がんは男性に多く、十二指腸乳頭部がんは男女ほぼ同数です。胆汁の流出路のがんなので、比較的早い時期に黄疸があらわれます。胆管炎を併発すると、発熱などの症状がみられます。治療はがんのある胆管を含めた切除で、多くの場合肝臓や膵臓を合併切除することが必要になります。また、最近は手術の前後に抗がん薬治療を組み合わせておこなう集学的治療が一般的になってきました。
 いずれのがんも切除ができないときは、黄疸に対する治療や抗がん薬治療がおこなわれます。黄疸に対しては、内視鏡を使って、胆管にプラスチックチューブ、メタリックステントを挿入することが第一選択で、外科的な手術(胆管空腸吻合〈ふんごう〉術)がおこなわれるときもあります。抗がん薬治療については、塩酸ゲムシタビンなど、複数の抗がん薬が使用されます。

(執筆・監修:自治医科大学外科学講座 主任教授〔消化器外科学〕 佐田 尚宏
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