胆嚢炎、胆石症〔たんのうえん、たんせきしょう〕

 一般には、これら2つの病気は一括して考えられています。胆嚢炎があれば、胆石はできやすくなるし、胆石があれば、胆嚢に炎症もあります。胆嚢ばかりでなく、胆管に炎症を起こすこともあります。胆嚢炎や胆管炎は胆石で起こることも、ほかの原因で起こることもありますが、どちらにしても症状はほとんど変わりません。胆石があって、症状のあるもの(炎症のあるもの)を胆石症といいます。無胆石症というのは、胆石のない場合をいいます。無症状の胆石を“沈黙の石”といいます。
 また、胆石症と似た症状のものに胆道ジスキネジーというのがあります。これは胆石がないのに、胆汁がうまく十二指腸へ出ないという機能的な病気です。

■胆石とはどんな石か、どうしてできるか
 胆石は、非常に軽いものです。表面はいかにもかたいように見えますが、わりあいたやすく割れます。こんなものが胆嚢の中に1個、時には数十個から2000個以上もできることがあります。胆石を構成しているおもな成分によって、コレステロール系石、ビリルビン系石、その他の胆石に分けられます。成分の割合によって、いろいろな胆石ができるわけです。
 胆嚢、胆道の通りがわるくなって、内容がたまりがちになってきたり、そこに炎症が起こってきたりすると、胆汁中の胆石をつくる成分が分離してきて胆石をつくると考えられています。年齢(30~40歳代)、風土、人種、職業、食物などにいくらか関係があると考えられています。食事時間の不規則な人に多いのも事実です。


■胆嚢の変化
 石があるために胆嚢に炎症を起こしやすく、胆嚢炎の症状を起こします。ひどいときは胆嚢がくさって、やぶれることもあります。
 また、胆嚢の中にできた石が胆管中に出され、これが胆管につまって、黄疸(おうだん)をはじめいろいろな症状をあらわしたり、胆管がそのために炎症を起こしたり、さらに進むと肝臓に膿瘍(のうよう)をつくったり、膵(すい)炎の原因になったりします。

[症状]
 疝痛(せんつう:発作的にくる痛み)がいちばんはっきりした症状です。前になにも症状のなかったものが、油物を食べて急に痛みを起こすことがありますが、前もって右上腹部になんとなく不快な感じがあったり、胃のところがはったり、胸やけや軽い痛みがあったりしたあとに疝痛が起こることもあります。多くは右肩や右背部に痛みが放散します。
 軽い場合は5~10分で痛みはうすれますが、数時間、数日間も続くことがあります。この痛みは胆道が炎症のためにつまったり、胆石がはまり込んだりして胆汁が通過しにくくなるのに対して、胆嚢がこれを通過させようと収縮するために起こると考えられます。熱は40℃にもなり、悪寒戦慄(おかんせんりつ:さむけがしてガタガタふるえる)のあることもあります。
 痛みが起こってから一両日遅れて黄疸が起こることがあります。黄疸は、石によって胆汁が胆管の中をうまく流れないために起こります。胆管がんと異なり、黄疸は強くなったり弱くなったりします。右上腹部がはって、そこにふくれ上がった胆嚢を触れることがあります。胆嚢の出口が石などでふさがれ、胆嚢がふくれ、ついにやぶれると、“胆汁性腹膜炎”を起こし、急に痛みが激しくなり、腹壁が板のようにかたくなった状態となります。高い熱が下がらないようなときには、肝臓の膿瘍のおそれがあります。これらは命にかかわる危険な合併症です。
 胆嚢から胆管へ落下した石が十二指腸乳頭(総胆管の十二指腸への出口)にひっかかると膵管が閉塞され、いわゆる胆石性膵炎を併発することもあります。膵炎も重症なものは命にかかわります。


[診断]
 胆嚢結石は胆嚢部の超音波(エコー)検査によって簡単に診断することができます。
 さらに胆石症を診断する方法の一つとして、X線検査があります。石の種類によってはX線画像に映ります。写らない場合でも、胆嚢を映し出す造影剤があって、それを経口的、あるいは経静脈的に与えることにより胆嚢を映したり、内視鏡的逆行性胆管造影法によって、中にある石をみつけます。造影剤によって胆嚢が全然映らないことがありますが、これは胆嚢が炎症を起こして収縮しないために造影剤が胆嚢に入っていかないからです。
 そのほか、口からゴム管を飲んでもらい胆汁を吸い出し、それを検査して胆石のかけらや、胆砂を見つけたり、胆道の変化を見つけ出すこともあります。経皮経肝胆管造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査で、石のある部位、種類がはっきり診断できます。
 また、肝臓機能検査によって肝臓の状況などを調べる必要があります。

[治療]
 痛みの発作があるときや、おさまっているときなどによって治療法は異なります。

■痛みの発作があるときの治療
 肉体的、精神的安静が大切で、寝かせます。痛みのひどいときには医師に痛みどめの注射をしてもらう必要があります。二次的に炎症が起こることがよくあるので、熱がごくわずかしか出ないときでも、抗菌薬の投与をほじめます。高熱があれば、もちろん用います。これは、医師の処方に従ってください。
 右上腹部の広い範囲に冷湿布をします。痛みの激しい間は絶食し、水分だけを与えます。痛みの激しいとき、熱の高いとき、胆嚢がやぶれ、胆汁性腹膜炎になったとき、肝臓にうみがたまったりする可能性が強い場合は、すぐ手術を受けなければなりません。

■痛みがおさまっている時期の手当て
 痛みの発作が去り、上腹部を押しても痛みがないようになったら、床から離れます。たいていは数日間の安静が必要です。食事については特に脂っこいものをとらないようにします。便通をよくすることも大切です。
 胆石発作を誘発する原因を避けるようにします。精神的・肉体的過労を避けます。
 胆管内の小さな胆石や胆砂には、十二指腸ゾンデというゴム管を飲んで、この管から硫酸マグネシウム液を注入し、胆嚢を収縮させ、胆嚢を洗います。しかし、この治療法は、胆嚢内にあるコレステロール系の石には効果がありません。
 痛みの発作が終わり生活が正常に戻っても、石が残っているかぎり発作をまた起こすことがあります。また、石を溶かす薬がいろいろあり、服用による治療が試みられていますが、まだはっきり効果のあるものは見つかっていません。

■外科的療法
 次のような場合は、ぜひとも手術をしなければなりません
 1.炎症が相当強くて、腹膜炎や敗血症を起こすおそれのあるとき
 2.胆石が胆管に落下して強い痛みや黄疸(おうだん)が出現したとき
 3.胆嚢がやぶれたとき
 4.胆石のため腸閉塞が起こったとき
 手術を受けたほうがよいと思われるのは次のようなときです。
 1.胆石による発作が頻繁に起こり、日常生活に支障が出るとき
 2.小さい胆石が多数あり、胆管に落下する可能性があるとき。このような場合は、胆嚢粘膜の変化が超音波(エコー)検査などではわかりにくくなるため、がんを早期に発見する機会を失う可能性もあり、その目的でも手術したほうがよいと考えられます
 3.長い間内科的治療を受けても回復する気配の見えないもの
 胆石症と胆嚢がんの因果関係については、あきらかな証明はされておらず、胆石が見つかったからすぐに手術になるわけではありません。
 なお、黄疸が非常に強い時期には、出血の危険が多いのですぐには手術をせず黄疸が軽くなるような処置をおこない、黄疸が軽くなってから手術します。
 手術の方法は、胆石のみを取り除くのではなく、胆石のある胆嚢を取り除く方法(胆嚢摘出術)がおこなわれます。胆嚢摘出術は現在は腹腔(ふくくう)鏡下胆嚢摘出術が多くの施設でおこなわれます。腹腔鏡という細長い筒を腹腔の中に入れて、中をのぞきつつ、鉗子(かんし)で胆嚢を取り出す方法です。この方法は腹に1cmほどの穴を3~4個あけるだけですから手術あとも目立たず、入院期間もごく短くてすみ、日帰り手術でおこなっている施設もあります。
 ただ、この手術は常に可能ではありません。腹の中に癒着(ゆちゃく)があればこの手術をおこなうことはむずかしく、また、従来の開腹手術にくらべて合併症が多いのも事実です。合併症を起こす危険性が高い場合は、無理して腹腔鏡下胆嚢摘出術をおこなうべきではないでしょう。
 患者の状態がわるくて胆嚢を摘除できない場合には、胆嚢を腹壁に縫いつけて、ここから胆汁が出るようにする手術(胆嚢外瘻〈がいろう〉造設術)がおこなわれます。この処置は超音波ガイド下に胆嚢を穿刺(せんし)して、カテーテルを挿入することによっても可能です(経皮的胆嚢ドレナージ術)。
 胆管の末端部が狭くなって胆管が太くなっているときは、この末端部を切開する手術(乳頭形成術)がおこなわれます。この手術は内視鏡を入れて、十二指腸からもできます(内視鏡的乳頭切開術)。また、胆管内に石があれば胆管を切開して石を取り出し、T字型の管(Tチューブ)を入れ、このT字型の管を体外に出して炎症が去るのをまちます。手術を受けて退院したのちは、約1カ月くらいかけて、正常の生活に戻るようにします。
 体外から衝撃波をあて、からだの中の結石を砕くという“体外衝撃波結石破砕術”もあります。この治療がおこなわれるのは、石灰化のないコレステロール系の石で、数が少なく、胆嚢収縮機能がある場合に限られます。
 胆石の予防には、動物性脂肪を食べ過ぎないようにするとともに、植物繊維を積極的に食べ、便通をととのえるようにします。朝食をきちんととって胆嚢を収縮させ、濃くなった胆嚢胆汁を十二指腸に出すことも大切です。
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