シンチグラフィ(SPECT/PET)検査
わたしたちの身のまわりに存在する元素のなかには、陽子数が同じ(原子番号が同じ)でも、中性子数が異なるものが存在することがあり、たがいに同位元素(Isotope)または同位体と呼ばれます。陽子数と中性子数の違いにより原子核の種類を区別したものが核種です。これら同位元素のなかには、放射線を放出する能力(放射能)をもつものがあり、放射性同位元素(RI:Radioisotope)または放射性同位体と呼ばれます。
特定の臓器、組織に取り込まれる物質に、放射性同位元素で目印をつけて(標識して)体内に投与し、体内から放出される放射線の一種γ(ガンマ)線をγカメラでとらえると、体内におけるその物質の分布や濃度を画像として描くことができます。こうして標識された物質の臓器・組織への取り込みやすさがわかれば、その臓器・組織の機能や活動性が評価できます。こうした検査はシンチグラフィ検査と呼ばれ、骨転移、骨肉腫などが検査できる骨シンチグラフィ、がんや炎症組織を見つけるためのガドリニウムシンチグラフィ、ヨウ素摂取率により機能が評価できる甲状腺シンチグラフィ、肺梗塞の診断に使う肺シンチグラフィなどがあります。
シンチグラフィの基本は、検出器を固定して、γ線の分布を平面的に測定して画像化する平面撮像法(プラナー画像)ですが、2~3個の検出器で複数方向からデータを収集して、CTのような断層像を撮影することもでき、SPECT(single photon emission computed tomography:単一光子放射断層撮影)検査と呼ばれます。代表的なのは、脳の血流分布を見る脳シンチグラフィ(脳血流シンチ)、心筋の血流の不均等を見る心筋シンチグラフィ(心筋シンチ)などです。
さらに陽電子(ポジトロン:positron)を放出する核種を用いたPET検査もよくおこなわれます。陽電子は電子と結合して消滅するときに、2本のγ線を180°反対方向に放出するので、360°のリング状に配置した検出器でこれを検出して、その存在部位をあきらかにします。がん細胞や脳、心筋細胞などは、ほかの組織よりも糖代謝が活発で、さかんにブドウ糖を取り込んでいるため、陽電子を放出する核種18Fで標識したブドウ糖(18F-FDG)を体内に投与してPET検査をおこなえば、がん組織の存在や、脳や心筋の活動状態がわかります(FDG-PET)。全身を一度に調べることができ、小さながんも発見できることから、健診などでも使われますが、もっとも威力を発揮するのはがんの転移を探す場合です。
このほかPET/CTのように、PETと高性能なマルチスライスCTを組み合わせた、一体型の装置も存在します。1回の検査で両方の撮影がおこなわれ、PET画像にCT画像を融合することができるため、集積部位がよりわかりやすくなって、診断精度の向上が期待できます。
シンチグラフィ検査で使用する薬剤に含まれている放射線は、人体に影響を及ぼす量ではなく、目立った副作用もないため、安全性の確立された検査法と考えられています。しかし、陽電子を放出する核種の半減期は短いため、PET用薬剤は、病院内にサイクロトロンなどの加速器を設置してポジトロン核種を生成し、薬剤合成装置で作製しなければならないのが難点です。使用量の多い都会では、こうした核種を配達してくれるシステムも確立しており、利用することも可能です。
最近は放射エネルギーの異なる核種で標識した化学物質を注射してその物質を取り込む悪性腫瘍や臓器の機能を、全身スキャンや特定の臓器で調べるD-SPECTが開発され、心臓や神経叢(そう)の活動、悪性腫瘍の存在を調べることもおこなわれています。
特定の臓器、組織に取り込まれる物質に、放射性同位元素で目印をつけて(標識して)体内に投与し、体内から放出される放射線の一種γ(ガンマ)線をγカメラでとらえると、体内におけるその物質の分布や濃度を画像として描くことができます。こうして標識された物質の臓器・組織への取り込みやすさがわかれば、その臓器・組織の機能や活動性が評価できます。こうした検査はシンチグラフィ検査と呼ばれ、骨転移、骨肉腫などが検査できる骨シンチグラフィ、がんや炎症組織を見つけるためのガドリニウムシンチグラフィ、ヨウ素摂取率により機能が評価できる甲状腺シンチグラフィ、肺梗塞の診断に使う肺シンチグラフィなどがあります。
シンチグラフィの基本は、検出器を固定して、γ線の分布を平面的に測定して画像化する平面撮像法(プラナー画像)ですが、2~3個の検出器で複数方向からデータを収集して、CTのような断層像を撮影することもでき、SPECT(single photon emission computed tomography:単一光子放射断層撮影)検査と呼ばれます。代表的なのは、脳の血流分布を見る脳シンチグラフィ(脳血流シンチ)、心筋の血流の不均等を見る心筋シンチグラフィ(心筋シンチ)などです。
さらに陽電子(ポジトロン:positron)を放出する核種を用いたPET検査もよくおこなわれます。陽電子は電子と結合して消滅するときに、2本のγ線を180°反対方向に放出するので、360°のリング状に配置した検出器でこれを検出して、その存在部位をあきらかにします。がん細胞や脳、心筋細胞などは、ほかの組織よりも糖代謝が活発で、さかんにブドウ糖を取り込んでいるため、陽電子を放出する核種18Fで標識したブドウ糖(18F-FDG)を体内に投与してPET検査をおこなえば、がん組織の存在や、脳や心筋の活動状態がわかります(FDG-PET)。全身を一度に調べることができ、小さながんも発見できることから、健診などでも使われますが、もっとも威力を発揮するのはがんの転移を探す場合です。
このほかPET/CTのように、PETと高性能なマルチスライスCTを組み合わせた、一体型の装置も存在します。1回の検査で両方の撮影がおこなわれ、PET画像にCT画像を融合することができるため、集積部位がよりわかりやすくなって、診断精度の向上が期待できます。
シンチグラフィ検査で使用する薬剤に含まれている放射線は、人体に影響を及ぼす量ではなく、目立った副作用もないため、安全性の確立された検査法と考えられています。しかし、陽電子を放出する核種の半減期は短いため、PET用薬剤は、病院内にサイクロトロンなどの加速器を設置してポジトロン核種を生成し、薬剤合成装置で作製しなければならないのが難点です。使用量の多い都会では、こうした核種を配達してくれるシステムも確立しており、利用することも可能です。
最近は放射エネルギーの異なる核種で標識した化学物質を注射してその物質を取り込む悪性腫瘍や臓器の機能を、全身スキャンや特定の臓器で調べるD-SPECTが開発され、心臓や神経叢(そう)の活動、悪性腫瘍の存在を調べることもおこなわれています。
(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)