CT(コンピュータ断層撮影)検査 家庭の医学

 X線管球とディテクターを、円周上で対角線上に配置して、円の中心部に人体を置き、X線を照射しながら一回りさせます。こうして得られた情報をコンピュータ処理すると、体内のある断面(断層面)を、X線透過率の違いにより描いた画像を得ることができます。これがCT(コンピュータ断層撮影:computed tomography)検査です。
 単純X線撮影で得られるのは、X線の進行方向の臓器・組織がすべて重なりあって写った写真です。このため、病変の前後に骨などX線透過率の低い臓器・組織が存在すると、病変はそれらの陰に隠れてしまい、認識がむずかしくなります。これに対して、CTで得られる断層像では、断層面内の臓器・組織がそれぞれ分離して表示されるため、病変が評価できるようになります。こうしてCTの登場とその後の進化は、近年の画像診断に革命的といってよい進歩をもたらしました。
 CT検査では、血管用の造影剤を併用して撮影することもできます(造影CT検査)。この場合、血流の多い少ないにより、組織間のコントラストが強まって見えるため、体内の構造や組織の性状について、より多くの情報を得ることができるようになります。たとえば動脈と静脈、その他の構造は明瞭に区別できるようになり、また病変部がどの血管に支配されているのか、血流は多いのか少ないのかなどもあきらかになります。これにより正確な診断だけでなく、適切な治療法の選択や治療効果の判定なども可能となります。
 近年では、より高性能のマルチスライスCTが普及しています。これはディテクターを体軸方向(からだに対して縦方向)に多数配列し、X線管球とともに高速回転させながら、らせん状に撮影をおこなう装置で、広い範囲を短時間で撮影できるのが特徴です。
 従来のCTでは、撮影はX線管球とディテクターの回転1回転ごとにおこない、撮影位置を体軸方向に順次ずらしてデータを取得していました。こうして得られるデータは、撮影間隔の広い、飛び飛びの平面データの集まりで、断層面も水平断(体軸に直交する断面:からだを輪切りにした状態の断面)が主でした。これに対してマルチスライスCTでは、撮影間隔のつまった、きわめて薄い多数の平面データが取得できるため、水平断に加えて、冠状断(体軸に平行な左右方向の断面)や矢状断(体軸に平行な前後方向の断面)での描画や、精度の高い立体画像の描出も可能となっています。これにより、冠動脈を3次元表示して血管造影なしで狭窄(きょうさく)部を診断したり、大腸内腔に空気を入れて撮影し、注腸造影と同様の画像を描出して大腸がんを診断したりといったこともできるようになりました。


(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)