呼吸機能・睡眠ポリグラフ検査 家庭の医学

 呼吸機能検査では、鼻ばさみをして、検査装置に接続されたホースのはし(マウスピース)をくわえ、安静時の呼吸状態から思いきり息を吸い(吸気)、続いてできる限り息を吐いて(呼気)、肺活量、1秒量、1秒率など、呼吸機能を評価するためのいくつかの指標を計測します。この際に装置が描くフローボリューム曲線は、これらの指標に異常がある場合、特徴的なパターンをとるので、これらをあわせて呼吸の状態を評価し、呼吸器(肺や気管、気管支)の病気の診断に役立てます。
 加齢とともにすこしずつ肺活量は減少していきますが、肺線維症などの病気で、病的に低下した状態を拘束性障害(こうそくせいしょうがい)といいます。いっぽう、気管支ぜんそくやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などでは、息を勢いよく吐き出せなくなるので、1秒間に吐き出す能力(呼出できる能力)が低下します。こうした状態は閉塞性障害(へいそくせいしょうがい)と呼ばれ、1秒量、1秒率が低下します。1秒量は年齢との関係が強く、肺年齢とも呼ばれています。
 肺機能検査では、このほかにも、肺胞と血液の間で酸素がどれだけ拡散しやすいかをみる、一酸化炭素肺拡散能(DLCO)という検査もおこなわれています。

 睡眠中に一時的な呼吸の停止がくり返し生じる、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)を診断するためには、睡眠ポリグラフ検査をおこないます。脳波(睡眠状態の確認)、眼球運動、胸郭や腹壁の呼吸運動、呼気・吸気の検知、顎(がく)部や頸(けい)部の筋肉運動、四肢の動き、パルスオキシメータ(血液の酸素濃度測定)などを、ポリグラフ(多数のデータを記録し描きだすこと)で同時に検査して解析します。通常は入院して一晩、睡眠中のデータを記録して解析します。
 SASと診断されたら、その原因に応じて減量、CPAP(持続性加圧呼吸補助装置)、マウスピースなどで治療しますが、治療の効果も睡眠ポリグラフ検査で確認します。

(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)