慢性胃炎は従来、内視鏡検査の観察によって診断され、表層性胃炎と萎縮性胃炎に分類されてきました。
表層性胃炎では胃粘膜の表面に炎症による赤い充血がみとめられ、萎縮性胃炎では胃粘膜が萎縮して薄くなり血管が透けて見え胃酸の分泌は低下します。萎縮性胃炎は慢性胃炎の大部分を占め、高齢者に多く胃がん発生と関連すると考えられています。
従来、内視鏡観察によって肉眼的に診断、分類されてきた慢性胃炎ですが、現在では慢性萎縮性胃炎のおもな原因はヘリコバクター・ピロリ(
Helicobacter pylori)の慢性的な持続感染であるとされるようになりました。したがって、同じ胃炎でありながら急性胃炎と慢性胃炎では症状や治療法が大きく異なります。
[症状]
慢性胃炎の大多数は基本的に無症状であることが特徴で、内視鏡検査などで発見されることがほとんどです。表層性胃炎では上腹部の不快感や鈍痛、胸やけなどを感じることもあります。
[治療]
従来より暴飲暴食、過度の飲酒やストレスを避け、規則正しい生活を心掛けることが推奨されています。さらに、ヘリコバクター・ピロリが慢性胃炎の主因であることがあきらかになって以来、ヘリコバクター・ピロリの除菌治療がおこなわれています。
[注意]
慢性萎縮性胃炎は高齢になるにつれてその発症頻度が増加するといわれ、また、慢性萎縮性胃炎は胃がん発生のリスクの一つと考えられています。したがって、慢性胃炎はほとんど症状もなく、うったえも少ない病気ですが、その診断と治療でもっとも注意しなければならないことは胃がんの発生を見落とさないことです。
慢性胃炎と診断された場合は、年に1回程度の定期的な内視鏡検査をおこないます。その際に必要があれば早期の胃がんが発生していないかどうか微量の胃粘膜組織を採取して顕微鏡で調べる病理組織学的検査をおこないます。
(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 教授〔食道胃外科〕 梶山 美明)
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