プレコンセプションケア
プレコンセプションケアとは、プレ=前、コンセプション=妊娠、ということばの示す通り、女性やカップルが将来の妊娠のための健康管理をすることを指します。プレコンセプションケアには、世界保健機関(WHO)のサイト(※)に解説されているように、不妊症への対応のみならず栄養状態の改善、ワクチン接種による疾病予防、禁煙、精神の健康問題への対応など、健康課題への幅広い取り組みが含まれます。このことからもわかるように、プレコンセプションケアは狭義には妊娠のための健康管理ですが、広義には妊娠希望の有無にかかわらず健やかな人生を送るための取り組みであり、プレコンセプションケアの第一歩は、自分自身の健康に意識を向けヘルスリテラシーを高めることといえます。
以下では狭義のプレコンセプションケアについて解説します。では、プレコンセプションケアはなぜ大切なのでしょうか。まず1点目として、現時点で妊娠を考えていなかったとしても自身の健康管理がおろそかになることにより、将来妊娠しづらくなる可能性があります。たとえば、妊娠するために必要な卵子を育む卵巣の機能は、肥満ややせ、喫煙などの全身の健康状態や生活習慣の影響を受けます。また男性の精子の状態も生活習慣の影響を受けます。さらに月経時の強い下腹部痛や過多月経(月経血量が多いこと)があっても婦人科受診をしない場合に、原因となっている可能性のある
子宮内膜症や
子宮筋腫などの病気に気づかずに過ごすことにより、それらが悪化し妊娠がしづらくなる可能性があります。2点目として、女性が妊娠成立時に健康であることは、妊娠中健康に過ごし安全に出産をするために必要です。さらに、生まれてくる子どもの将来(成人期)の健康状態が生まれる前の母親の胎内での状況に左右されることがあきらかとなっています(DOHaD仮説)。このように、妊娠時、妊娠中の健康状態が女性自身のみならず、生まれてくる児にとっても重要です。3点目として、親として子どもを養育していくうえで、心身の健康が重要であることはいうまでもありません。
自身の健康に気を配り、適切な情報収集にもとづいた健康管理をおこなうこと、そして検診を受けたり、かかりつけ医をもったりすることにより、病気の早期発見、対応につとめることがプレコンセプションケアとして重要です。
※ https://www.who.int/publications/i/item/WHO-FWC-MCA-13.02