膝関節のおもな病気 家庭の医学

コラム

膝関節軟骨の再生医療、PRP/幹細胞の関節内注入治療について

 近年、自らの関節軟骨を1度目の手術(関節鏡下手術)でごく少量採取し、そこから分離した軟骨細胞を培養して生体外で関節軟骨組織をつくり、4週間後に2度目の手術で軟骨損傷部位に移植するという関節軟骨再生医療が、外傷性軟骨欠損症と離断性骨軟骨炎にかぎり、健康保険適用となりました。しかし、この方法は、関節軟骨の年齢的な変性が原因で、病変部が広範囲に及ぶ変形性膝関節症に対しては、現在(2024年4月)、保険適用は認められていません。一方、一部の医療機関では先進医療(保険診療外)として、膝周囲骨切り術との組み合わせで再生関節軟骨組織を変形性膝関節症の病変部に移植する治療が開始されています。現在、多くの軟骨再生医療の基礎的研究、臨床応用研究が進められており、近い将来には変形性膝関節症にもこれら関節軟骨再生医療が保険適用となることが期待されます。
 いっぽう、PRP(Platelet Rich Plasma、多血小板血漿)という自らの血液から抽出した成分を関節内に注入したり、あるいは手術的に採取した自らの脂肪組織から得られた幹細胞を体外で培養増殖し膝関節内に注入したりする、再生医療をうたった治療を自由診療(保険診療外)でおこなう医療機関が散見されるようになりました。これらの治療については、患者さんそれぞれの状態による効果発現や効果持続期間の違いなど、いまだ解明されていない点も多く、変形性膝関節症の治療としての位置づけは確立していません。今後の研究の進展が待たれます。