近年、内視鏡診療において人工知能(AI)などの医療機器プログラム(SaMD)の普及が注目されている。厚生労働省による今年度(2024年度)の診療報酬改定では、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術において「病変検出支援プログラム加算」(60点)が新設された。医用画像診断支援AI開発企業のサイバネットシステムは4月17日、都内でメディアセミナーを開催し、内視鏡画像診断支援プログラム「EndoBRAIN-EYE」が今年度の改定に伴い診療報酬加算の対象になったと発表。昭和大学横浜市北部病院消化器センター講師の三澤将史氏らが、内視鏡診療におけるAIによる診断支援の意義について解説した(関連記事:「2024年度診療報酬改定が最終決定!」「AIは内視鏡医の感覚を可視化できるか?」)。

画像解析で病変発見を補助

 大腸ポリープなどの腫瘍性病変の発見において内視鏡検査はゴールドスタンダードであるが、1検査当たり約4分の1の病変見落としが起こるとされAm J Gastroenterol 2006; 101: 343-350)、患者の予後を改善する上で病変発見率の向上が求められている。

 EndoBRAIN-EYEは、昭和大学を含む国内5施設で集積した学習画像を基にサイバネットシステムと名古屋大学大学院情報学研究科システム知能情報学教授の森健策氏が共同で開発したSaMDである。大腸内視鏡で撮影された画像をAIで解析し、ポリープなどを検出すると警告を発して病変の発見を補助する。2020年に、日本で初めて薬機法承認を取得した病変検出用内視鏡画像診断支援AIとして発売された。

 さらに、今年6月からは保険医療材料評価区分がA1(包括、診療報酬加算なし)からC2(新機能・新技術、診療報酬加算あり)へ変更。EndoBRAIN-EYEを用いた診察で診断されたポリープを切除した場合に「病変検出支援プログラム加算」として60点が計上される

2,261例の前向き研究で有用性実証

 サイバネットシステム取締役の渡瀬順平氏は、大腸内視鏡検査を施行した2,261例を対象にEndoBRAIN-EYEの有用性を検討した前向き研究について紹介(Gastrointest Endosc 2022; 95: 155-163)。EndoBRAIN-EYE不使用群と比べ、使用群では専門医による腫瘍検出率に向上が見られた(21.6% vs. 31.2%)とした上で、「研究結果に基づきEndoBRAIN-EYEによる診断能向上が認められ、加算対象製品となった」と説明。実臨床においては、悪性度が高く進行が速いにもかかわらず早期発見が困難な陥凹型大腸がんを検出できる点、検査手技に対しほぼリアルタイムで内視鏡画像を判定できる点が特に有用であるとした。

 三澤氏は、EndoBRAIN-EYEの性能評価試験の結果を紹介し、「300個の病変を含む大腸内視鏡動画を試験対象とした後ろ向き研究においても、種々の病変に対し高い感度・特異度を示した」と強調した(図、写真)。

図. 性能評価試験の結果概要

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(メディアセミナー資料)

 さらに、同氏は「病変の見逃しに伴うがん化などのリスクを低減できることは、患者にとって有益である。EndoBRAIN-EYEは腫瘍性ポリープ、腫瘍性病変、早期がんの発見率を有意に向上させる」と説明。その上で「究極的には、専門医不在の地域などでも専門医と同等の病変発見率を実現することが求められる。医療従事者だけでなく、検診受診者などにおいても内視鏡画像診断支援プログラムが医療資源として広く認知され、社会に普及していくことが期待される」と展望し、内視鏡AIが医療の均霑化につながることへの期待感を示した。

写真. EndoBRAIN-EYEによる大腸内視鏡検査を実演する三澤氏

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(小田周平)